生き残れ! 東大大学院経済学研究科 地獄の修士1年前期
※この記事は、サークル「東大幻想郷(以下、GUT)」の、アドベントカレンダー2021内の記事の1つとして書かれたものです。
はじめに
皆さんこんにちは。
御存じの方もそうでない方も、犬上です。
現在、東京大学大学院経済学研究科で、修士課程1年をしています。
思えば大学に入学してから5年。
文系なので、世の中一般的にはもう卒業して働いている頃ですが、気づいたら大学院におりました。
まぁ、人生の転機とは得てして思わぬところに転がっている物でして、恐らく年長の読者の方はよくご存じでしょうし、僕より若い読者の方もいつか経験することでしょう。
なので、こうして年甲斐も無く駄文を寄せております。
もう今のGUTの新入生とかの顔も知らないほど老人になってるとか、気のせいだよね。
さて、口上が長くても飽きると思うので本題に移ると、とにかく文系大学院生というのは、世の中的には誤解されているような気がしてなりません。
曰く、猫よりヒマとか。
曰く、何か学問に耽溺しているとか。
曰く、「それ君の趣味だよね?」とか。
分野等に関わらず、なんだか有閑ニートさながらなことを言われることも珍しくありません。*1
理系の大学院生は、割とどんな分野でも「まぁ理系なんだし大学院位行ってもおかしくないよね」という雰囲気があるもの*2ですし、何より「理系の院生って社畜より忙しいんでしょ」みたいな感じがありますが、やっぱり文系に関しては「ニートかな?」みたいな扱いを受けることも多いです。
しかし、実際に進学を考えた際に初めて気づいたんですが、具体的な東大経済学研究科の実態に関する情報はネット上に兎に角少ないのです。
とにかく大学院に来る人が少ないので、数人の先輩が残した足跡くらいしか追えません。
なので、せっかくの機会を借りて大学院生活とはどのようなものか、まだ見ぬ後輩とか知人とかに知ってもらおうというのが、今回の趣旨でございます。
第1章 春休みから始まる補習
さて、大学院にはそもそも入る前から「やれ研究計画書が」「やれ試験勉強が」と、色々存在するわけですが、その辺についての詳細は割愛します。
ただ、研究計画書に関して言えるのは、研究計画書って、理系みたいに研究室配属で先輩が研究のやり方教えてくれるとか、外部の大学院に出すので不正になり得ず先生が研究計画立案を手伝ってくれるとか、卒論で大内兵衛賞*3をとるためにみっちり扱かれたみたいな状況なら兎も角、そうでない場合はどう書けば良いかも分からないところから始まるので、早め*4から頑張りましょう。
あと、試験に関して言えるのは、僕の人生有数に大変だった面接に、某社のインターン選考での「チキチキ! 真顔の社員*5さん10名 vs ボク1人 ~楽しい楽しい大企業面接~」というのがあるのですが*6、院試の口述試験は、場合によってはそれ以上に怖いです。
何を聞かれるかとかの詳細は、残念ながら受験時の制約の関係上言えませんが、まぁ他の先輩の記事でも見てください。
内部でそのまま大学院に上がるのが当然な分野の理系フレンズの口述試験の話なんて、当てになりません。
話を元に戻すと、上記のような死闘(?)を潜り抜け何とか合格になると、内部生は単位を持ち上げよう*7と追加単位を回収したり卒論を書く日々に戻り、卒業要件を満たせば当然大学最後の春休みがやってくるのですが。
経済学系の大学院生の春休みは皆よりちょっと短いです。
何故なら、3月末に4日もかけて8時限分、通称マスキャン*8と呼ばれる数学の補講が開講されるから。
それも、英語で。
そう、英語でです。
それも、文系最大の敵である、数学を。
当然、英語はTOEFL*9*10を受験時に出すので最低限みんな分かってるんですが、数学用語なんて普通やらないので、その時点で「なんだこれは?」ってなります。
しかも、やる内容もえげつないです。
理系だったら「デカルト積」「ユークリッド距離」「有界集合」「コーシー列の収束」「対応*11」「不動点定理」とか、「行列の特性方程式と固有値」「行列の微積」「ヘシアン」「収縮写像定理」とかは、大学1年とか2年で普通にやるんだと思うんですが*12、経済系とはいえ学部生がやるのはせいぜい「全微分・偏微分」「テイラー展開」「行列式」「線型方程式」「非負定値行列」くらいなのであって、さっき挙げたようなのは出てきません。
まぁ、ということで、予習復習に時間を取られて8時限分の時間では済まないです。
そもそも、講師は教官ではなく先輩方なので、割と僕らに近い感覚かつ優しさの下で行われるんですが、それにしたってわからない。
しかし、これを理解しないと待つのは死です。
これらの知識は全て、大学院の必修であるコアコース*13で使われるのですから。
第2章 あ、野生の75時間かかるコースワークが飛び出してきた!
上記の楽しい補習が終わると、次に始まるのは新生活。
さぁ、心躍る憧れの大学院生活の開始です。
授業は週たった4科目5時限。
どんな趣味に時間を使おっかな…。
はい。嘘です。
いや、実を言うと嘘じゃないんです。というのも、実際に授業時間はたった4科目5時限で、そこは嘘じゃないからです。
しかし、これを学部時代の額面と同じく受け取ってはいけません。
そもそも、学部時代の授業って大半は、受けてればお終いだし、聞けば理解できるし、たまに課題がめんどくさくても単位なんとかなるし、何なら文系はサボってても試験勉強頑張れば何とかなったりしますよね。
大学院は、そうではないのです…。
まず、見えない時間に「TAセッション」があります。
TAとはみんな御存じTeaching Assistant、つまり大学の先輩方が授業の補助教員としてバイトで入っている人たちです。
同じ大学の方なら、だいたいどこかで見たこともあるのではないでしょうか。
そんな、学部時代は何か授業に居たりして雑用してるな…って程度の彼らが、大学院の授業になるとTAセッションという名前で、授業2回に対して1回くらいのペースで補講を行います。
え、学部でも授業によっては開催してたじゃないかって?
その通りですね。しかし、君はその授業、出てましたか…?
少なくとも、僕の周りの人は出てませんでした。
東大経済学部の学部のTAセッションは、あくまで出なくても単位でも何でもとれる、いわば本当に真面目な一部の学生や、その科目が好きな人とか向けの印象があります。
しかし、大学院では違うのです。
そもそも、先生が何を言ってるか分からない場合があります。
あるいは、先生が「ここは飛ばすからTAにでも習ってね」と、さらっと大事なことを飛ばしたりします。
授業で使う数学の概念*14とか、授業で使う動学問題の解き方*15とか、コースワークに必須のプログラミング*16の使い方とか。
もちろん、知識があるなら出なくても良い*17のですが、たいていの場合、知識が足りません。
なので、実質週7コマまで授業数が増えます。
さらに、7コマと言っても学部時代と違って聞いて終わりとはいきません。
聞いて理解できなければ、次回までに予習復習で何とか最低限でも理解を形成しないと、次の授業についていけなくなります。
あ、言い忘れてたけど、東大経研ではコア科目やそれに準ずる重要な科目は全部英語開講*18なので、もしかするとその辺も理解不足に拍車をかけてたかもしれません。
なので、授業によっては額面の2倍や3倍の時間がかかります。
しかも、追い打ちをかけるのが、コースワークです。
さっきから出てるこの単語。一体何と思われてるかもしれません。
コースワークとは、コア科目で出る宿題のことです。
国際的にはどうか知りませんが、基本的に東大では山ほど出ます。
そして、これが分からないし、終わらない。
そもそも、必ずしも独りで挑んでいるわけでは無くて、授業によっては助け合って進めるためにグループを組むことが推奨*19されます。
また、独りでやらなくてはいけない授業*20でも、一部の例外*21を除けば相談は可です。
だけど、終わらない。
授業によって違うものの、大体2回から4回の授業に対して1回出る程度が普通なのですが、1授業あたり中央値*22で10時間*23から30時間*24くらいかかります。*25
つまり、どういうことかというと、全休を丸1日か、普通の日の授業以外の時間を2日潰さなきゃいけない宿題が週に1個か2個*26と、1週間ほど死に物狂いにならないといけない課題が、3週間に1回くらい出ます。
そして、宿題が授業によっては成績の40%のウェイトを占めたり*27します。
ちなみに章タイトルの75時間というのは、ちょうどゴールデンウィーク期間中にやったマクロ経済学の第1回の課題です。
さっきから言ってるこの75時間とか30時間というのは、丁度当時に何とか無駄な時間を減らして休息を増やそうと生活記録をとっていたものから見えた結果なので、体感ではなく非常に正確な時間であることを保証します。
いや、先生は分かりやすく授業してくれてたけど、なんかコースワークに必要な発展的な知識はレジュメとか授業内容に入って無かったりしたんですよね*28。
なので、課題のために副読本で時系列分析の本を1冊に、あと自分が専攻する予定じゃない分野の論文を英語で数本読むことになりました。
流石に皆、初めてで勝手も分からない状態にそれを食らって討ち死にしたので、神様のようなTAの先輩方が御慈悲で期限を伸ばしてくれたんですが、まあそれでも終わらないと思いましたよね。
当然、最後徹夜だったし。
え、ゴールデンウィーク?
全部消し飛んだよ。ゴールデンワークの間違いでは?
あと、完成した提出物は、慣れないLaTEXで清書して最終的に提出しなきゃいけなかった*29ので、それが拍車をかけてた感はありますね。
印刷の時間とか合間の5分休憩とか関連した雑用も併せれば、80時間を超えたのは内緒です。
さて、話を元に戻すと。
たしかに、週7コマしか授業自体が無いのは、一見暇そうです。
しかし、コースワークに圧殺される限り、その生活には余裕などとてもありません。
特に、理系的には学部時代も、専門課程から選考によっては週20コマかつ実験は延長多数とかなので「だから何?」となるかもしれませんが、文系は「週10から15コマ」程度で暮らしている*30ので、この落差は非常に激しいです。
ある敬愛する先輩の言葉を借りるなら、「永遠に終わらない強制ランニングマシーンの上で走り続ける」のが前期です。
なので、結局は、一握りの「あ~、こういうやつが将来は世界の一流大学*31の教授になるんだろうな」って人を除いて*32、週末や休日なんてものは無くなります。
ある日は、研究室から命からがら終電で帰った友人と、深夜4時に「ここどうなってるんだろうねー」と言いながら、答えが出ない問題に気が狂ったように笑い。
ある月は、半月ぶりに何とか作った半日の休みが、プライベートの用事を済ませるだけでつぶれて呆然とし。
ある月は、週末に3時間程度だけ、息抜きでしていた某ゲームの時間すら1か月間とれず*33、休日が無くリフレッシュが難しい分だけメンタルを守るために削らないようにしていた睡眠時間も、平均5時間睡眠まで削り。
ある月は、気まぐれで月の残業相当時間を計算してみたら100時間を余裕で超えてたり。
大学院前期の生活は、そんなものです。*34
第3章 追い打ちをかける就職前線
以上で今回の本題は大体終わりなのですが、とはいえ、少し情報が不足しています。
というのも、上記はポンコツ大学院生である私の実体験ですが、生活が厳しかった理由には、実は就活の時間も含まれているからです。
最近は、就活がインターンで早期化しています。
なので当然、博士課程を目指す人以外は、特に文系修士には研究室の推薦とかも無いので、普通に就活するためにもインターンを探さなければいけないのですが。
大学3年生以上の人は知ってる話、インターンとか出すのって結構大変なんですよね。
ボクも削りに削って週5時間くらいしか平均で使ってなかったんですが、しかしまぁ、エントリーシートに面接にと、慣れないものが沢山襲い掛かってきます。
とはいえ世の理なので、凡人は社会に適合しようと足掻くしかないわけですが。
コースワークで削られた休み時間はガリガリと音を立てて削られ。
結局、経研修士は出願で5~7社くらいしか出せないのが普通*35です。
一方、博士課程に行きたい人は暇かと言えば、そうではありません。
もしも、先のコースワークが博士課程進学要件を満たさなければ、容赦なく修士で放り出されます。
具体的には、ミクロ経済学とマクロ経済学で優(A)、計量経済学で良(B)が求められます。
そして、これをとるのはかなり難しい。
そもそも、東大経研はコア科目の授業内容自体が難しいらしくて、ただでさえ修士で修了して出ていくつもりの学生は、修了要件になら条件付きで代替できる、内容が易しい*36公共政策大学院*37の授業に逃げがちであり、公共政策大学院が激怒して人数制限かけたという噂*38があるくらいなのですが、それで優をとるというのは相当です。
(実際、普段は経済学研究科経済専攻経済学コースの学生って50人位居るし、大学院進学予定の学部生の受講者もいるので、例えばミクロ経済学とかだと授業受けてる人はZoom上に80人位居て履修登録者も72人居たんですが、計量経済学2とかは履修登録者が57人で試験には40人位しかいませんでした。)
一応救済措置として追試等はあるのですが、皆が優を取り直せる訳でもなく。
追試*39の時の某教授の言葉が忘れられません。
"Don't worry. If you will not be able to satisfy the requirements, Todai is not the only graduate school of economics. "(うろ覚え)
慰めの言葉という意味では優しさも感じますが、何人か追い出すことが暗黙の前提として存在する言葉だというのを踏まえると、厳しい言葉でもあります。
第4章 具体的な個々の授業とかの話
以上で言いたかった話はおしまいですが、もしも大学院に進学する予定の人とかが居たり、「結局具体的に何してたの」って思ってる人が居たらと思って用意しました。
なので、この章は、ある意味蛇足で、大学院に進学する予定とかのある人以外にはつまらないかもしれません。
興味のない方は、最後の「終わりに」へお進みください。
第1節 経済学のための数学
通称「経ため」、または「マスエコ」*40。
唯一必修外ですが、未修者はミクロ経済学のために受けないとミクロが理解できない、いわば準必修的なポジションの授業です。
担当する先生によって中身が変わってしまうという噂があるものの、現状のカリキュラムでは最初の方は春のマスキャンでやった内容の焼き直しなので生きてられます。
ただ、4回目くらいから、何か気づいたら良く分かんなくなってたりします。
主にやってるのは解析学で解を求めるための定理とかであり、例えば集合論的な部分なら"Nested cells theorem"*41 とか、ハイネ・ボレルの被覆定理、ワイエルシュトラスの定理*42。
数列や連続性に関しては、上方ヘミ連続性*43とその収束とか。
不動点定理では、ブラウワーやタルスキ、角谷の不動点定理にスピナーの補題。
このうち、マスキャンレベルの内容やハイネ・ボレルの被覆定理は、経研生御用達の神谷・浦井「経済学のための数学入門」に出てくるのですが、まぁ他は出て来ず…。
下手したら日本語どころか英語でググっても出て来ないので、強く生きてください。
一応、諦めて追加でSundaram*45あたりを購入して、わかんないところをつまみ食いのように読むと、多少は救われると思います。
古いから、やっぱり載ってない内容も沢山あるけど。
あと、ブラウワーの不動点定理は、実は、ゲーム理論をする人が大体は読んでるギボンズ「経済学のためのゲーム理論入門」にも少し載ってます。
あとは、最初の方の理系の一般教養科目と共通的な内容の部分に関しては、ググれば他大学の講義ノートが理系向けだけど出てきたりして*46理解の助けになることもあるので、その辺も読んでみると救われた気がすると思います。
第2節 ミクロ経済学
上記の経ための内容を踏まえたうえで、前期は古典的な価格理論、つまり消費者理論と生産者理論、部分均衡分析に厚生経済あたりをします。
ゲーム理論は後期です。内容的には学部と被ってますね。
でも、重要なのは、最初から数学的な証明問題のオンパレードだということです。
だいたい学部までの経済学では、いわゆる微積とかラグランジュ乗数法を用いて均衡点とかを導いてれば済みましたが、大学院のミクロ経済学は、数学の証明問題そのものになり、コースワークでも永遠に証明を行うことになります。
自分も含め、ここの違いに戸惑う学生は多い気がします。
また、中身も強烈で、最初から論理と集合の成果物である「社会選択理論」などで、いわゆる「選好顕示」に関する証明が行われたりします。
この辺に関しては、割とググると他大学院の資料が日本語で転がっていたりもするので、自習が追いつかなくて困ったときに使ったりしてました*47。
あと、学部では「予算線と無差別曲線の接点だから~」とか言ってたやつも、「予算集合と無差別曲線の関係」に代わり、集合論になります。
もちろん、経済学部生が大好きな「ナッシュ均衡*48」とか「エッジワースボックスとコア」も、学部みたいな図によるお絵かき説明は許されず、不動点定理や収束に関する理論を使いながら、数学的に証明されたり求められたりします。
教科書は名著MWG「ミクロ経済学」*49ですが、これは1000ページを超える、いわば「鈍器」でございまして、発狂した経研生による殺人事件の凶器の1つとしても有名(大嘘)です。
しかし、例え価格理論の専門家になる気が無ければ通読に向かない*50とはいえ、読まないと先生が「これは簡単だから自分で証明してね」とか言い出した部分の証明が永遠に思いつかなかった時に死ぬので、だいたいは皆つまみ食い*51とはいえ読むことになります。
あと、経ためもそうでしたが、担当がM先生ならレジュメのCheck!は本当にチェックしておかないと、もれなく試験で死にます。
第3節 マクロ経済学
打って変わって、マクロ経済学では、あんまり先のようなのは出てきません。
せいぜい、静学均衡を求めてたのが動学均衡を解くようになるだけで、案外紙の上では使ってる定理とか以外、やってることも変わらないです。
なので、難しいけど取っ付きはしやすいかもしれません。
例えば、ソローモデルの拡張系みたいなのをラグランジュ乗数法で解いていた状態からハミルトニアン*52で解くようになります。
あとは、ラムゼイ・キャス・クーパーモデルとか、ダイアモンドモデルとか、宇沢*53・ルーカスモデルとか。
トービンのQ理論と、林*54のQ実証も出てきます。
もちろん、経済学は「古典派→ケインズ派→新古典派→シカゴ学派→新しい古典派→新新しい古典派総合(うろ覚え)」と発展してきてるので、リアルビジネスサイクル(RBC)理論とか、その発展のDSGEモデルとかもやります。
教科書は基本的にローマー「上級マクロ経済学」ですが、たまに別の洋書*55もモデルへの理解を深めるために読むことになります。
あと、コースワークが分かんなくてBaglianoを読んだりしたこともあります。
とはいえ、基本的にはローマーで済みます。神。
というか、個人的に疑問なんですけど、よく「大学院レベルのマクロ経済学へのつなぎに二神・堀『マクロ経済学』*56を読もう」みたいな話があるじゃないですか。
あれって実は、二神先生の別著作「動学マクロ経済学 成長発展の理論」の間違いだったりしませんかね?
というのも、学部の取りこぼしを復習するには確かに「マクロ経済学」は大変便利なので、大学院受験自体にも恐らく役に立つのですが、実際の大学院の副読本に役立つのは「動学マクロ経済学」だから*57です。
出たのも「動学マクロ経済学」の方が先だし。
話を戻すと、ただ、ここまでは気安い面を書いてきたのですが、重大な問題が一つありまして。
というのも、大学院のマクロでは、コースワークで「時系列分析」と「シミュレーション」を永遠にやることになるからです。
そもそも、マクロ系のゼミに居たなら兎に角、大体の応用経済系のゼミとかでは、時系列分析はしません。
基本的に計量経済学で習うのは、学部大学院問わず、ミクロデータ分析の技術だからです。
ですが、大学院ではHPフィルター*58に、ARモデル*59付近から始まり、定常過程にADF検定*60とランダムウォーク、確率トレンド、グレンジャー因果性に、VARモデル*61、インパルス応答関数*62。
あとは理論から導かれる分布を使って状態空間モデルに、ベイズ統計的な事後確率による事前分布の更新等々、とにかく時系列分析をすることになります。
当然、プログラミングすることになります。
Pythonとか、Pythonとか、Rとか、Pythonとか、Matlabとか。
うーん。
RでなくPythonなのは何故なのでしょう。
経済系は基本的にRを使うことが多いと思ってたのですが。
まぁ多分、時系列分析は理系も同じことをかなりやるので、Pythonのライブラリが充実してるんだと思います。
なので、TAセッションでTAが触りを教えてくれるのも、コースワークの答えに書いてあるのも、基本的にはPythonのコードです。
ただ、例えばBeveridge・Nelson分解*63とかはPythonにライブラリが無く、日本語だとググっても昔の某H教授の論文に名前くらいしか出て来ないし、レジュメではARでの説明しか無くて足りなかったので、英語の論文を2~3本読んで自分で実装することになりました。
あと、ライブラリがあっても、いわゆる「クラス」の中身を編集しなきゃいけない時に、そんなものは情報科ならとにかく、経済学生にとっては完全に守備範囲外なのと、最終的に学者になりたいなら自活できるようになれって意味も多分込めて誰も教えてくれなかったので、涙目になりながら調べて実装してました。
あと、シミュレーションに関してはMatlab上でやることになります。
使うのはDynareなので、Octaveでもいいかと思って使ってたら最後動かなくて泣いたので、最初からMatlabでやるのがオススメです。
ところで、オススメという意味では、Pythonに関しては、例えば学内の松尾研が出してる「東京大学のデータサイエンティスト育成講座」とかが助けてくれると思います。
一般向けの書物なので数式などの理論面はほとんど書いてない*64ですが、逆に、理論が分かっている人や理論の前にまず触ってみたい人向けの、Pythonのコードの書き方の本だと思えば非常に取っつきやすいです。
なので、学部生のうちに機械学習以外のパートをやっておくと、多分幸せになれると思います。
もちろん、機械学習は最新のデータサイエンスとして社会に直結する分野であり、そして、直近において経済学研究への応用も拡大し始めている分野です。
更には、かつ計量経済学のノンパラメトリック分析*65を理解するには機械学習的な知識がある方が楽なので、個人的には機械学習パートもやれば、より幸せになれると思いますが、個人次第かなとも思います。
時系列分析に話を移すと、こちらに関しては、沖本「経済・ファイナンスのための計量時系列分析」*66が役に立ちます。
マクロ時系列分析の理論に関して詳細に書いてある大変な名著で、何を隠そう、75時間かかる課題の時に必死に読んでいたのはこれです。
しかし、適度に薄くて非常に役には立つのですが、春休みとかに予習用に読もうにも、これを読める人はそもそも行列とかが完璧に理解できてる人だと思うので、まずは西山・新谷・川口・奥井「NLAS計量経済学」がオススメです。
NLASは2019年に出た最新の計量経済学の教科書で、日本語で実に700ページもある鈍器であり学部生には恐怖から敬遠されてる気がしますが、付録まで含めて詳細で非常に丁寧であり、4000円と少し値段も高いけど、何にも分からない時に辞書的に引くと幸せになれる教科書です。
なにより、実証研究で鳴らす先生方が書いているので応用例も豊富であり、かつマクロ部分だけなら150ページくらいなので、分厚さ以外は神です。
独りで通読しようと思わなければ、非常におススメです。
第4節 計量経済学
計量経済学もまた、ミクロ経済学ほどの取っつきづらさは無いのではないかという気がします。
というのも、最初の方に関しては当然ですが学部と被る内容も多く、また、それ以外に関してはより上級の、発展的な推定方法や、違う仮定に基づく推計方法を追加で学んでゆくことが基本になるからです。
とはいえ、私は学部で正課の授業をとっておらず*67、ゼミでの田中「計量経済学の第一歩」*68の輪読や、山本「実証分析のための計量経済学 正しい手法と結果の読み方」*69での独学によって学習したので、どのレベルまで学部でやっていたのかイマイチ知らないのですが、当時や現在入手している手元の学部向け授業の資料を見る限り、レベル感的にはあまり第一歩と変わらなさそうです。
ただ、内容の難しさという意味では、段違いに大学院では難しくなる気もします。
というのも、第一歩や学部レベルの教科書を見ていれば分かるのですが、基本的には統計量の性質等に関しては、言葉で説明されることも多いです。
また、浅野・中村「計量経済学」こそ、学部生が対象の教科書としては珍しく、徹頭徹尾行列が出てきます*70が、学部レベルの教科書や授業だと、第一歩やNLSAの付録以外の部分のように、行列が出て来ないケースが基本です。
内容自体も、非線形回帰に入らず、線形回帰で終わってしまうケースが見受けられます。
しかし、大学院で求められるのは、例えば大数の法則や中心極限定理から始まり、行列を用いて、モーメント条件などを利用し、どのようにパラメータの推定量が導かれ、どのような数式の形をしており、どのような場合にバイアス等がかかった誤った値を数学的にどの程度出してしまい、どの回帰法を使うのが統計的検定のために一番「効率的」でよろしいか、などをなぞり、抑えていくことです。
そしてコースワークでは、現場で学者が自ら使うことを想定して、推計の際に使うべき関数形などを計算して求め、授業で行った定理や、証明が飛ばされた話、あるいは「こういう場合には本当にこの統計解析法は使えるのか」というを疑念を、ワークに沿って証明しつづけることになります。
あるいは、時には実際にRなどで疑似データを発生させてシミュレーションすることもあります。
また、新しい手法で学ぶ内容としては、情報をフル活用したい一方で難しい場合に居て、いかに情報を損なわずに統計解析を行うか。
あるいは、どのような仮定が行われているのか改めて知り、非線形回帰やノンパラメトリックな回帰を如何に行ってパラメーターを推計するのか。
そういった難しさが付きまとうことになります。
具体的には、計量経済学1は、学部からの延長です。
主に最初3回くらいで、最小2乗法*71、射影*72、単回帰、重回帰、FWL定理、欠落変数バイアス、漸近理論など、学部なら1単位以上貰えそうな部分を、行列で詳細な性質等を見ながら爆速で済ませます。
その後は、F検定やワルド検定*73、一般化最小2乗法*74に、操作変数法*75と2段階最小2乗法*76、一般化モーメント法*77、非線形一般化モーメント法*78、最尤法*79などを行います。
それぞれ、分散が理論上どのくらいに収束し、どのように証明されるのか、場合によってはどのような重みづけ等が最適かなど、内容そのものは学部でも教わりそうなものを多く含むものの、高度な中身を見ていくことになります。
本来文系として生きていれば見ることが無い、クロネッカー積やナブラ演算子などが資料の上を踊っていることを除けば、まだ取っつきやすいです。
一方、計量経済学2になると、中身は知らない範囲に進み始めます。
最初の方こそパネルデータの固定効果モデルや、非線形回帰のプロビット回帰、サンプルセレクションモデル、持続時間モデル、ローゼンバーグとルービンの傾向スコア推定など、教科書によっては概要や分析法を含む範囲を進みますが、この辺で分位点回帰や極値推定量、2段階極値推定、ニュートン・ラプソン再帰法、ブーストラップ法など、人によっては知らないものが出てきて怪しくなってきます。
その後はこれまでのパラメーターを設定していた推定を超え、ノンパラメトリック推定*80やセミパラメトリック推定の領域に入り始めます。
ここが非常に難しいです。
というのも、カーネル回帰も知らない経済学生が、新出の「バンド幅」の概念などを多量に含み、かつ今までよりもはるかに複雑になった漸近性質の導出を理解するのは、凄まじい苦労だからです。
皆大好きバイアス分散分析とかも出てきます。
回帰木と決定木など、機械学習的に色々見たことがある人にとってはかえってこの辺の方が楽なような気もします。
しかし、これらの機械学習的な統計学は予測問題を解くことを目的にすることが多く、因果推論的な識別問題を目的にパラメトリック推定を学んできた経済学生は、基本的に知識が無いので苦しむことになります。
とはいえ、逃げることは出来ません。
非常に強力な実証手法の1つとして、学部でも応用経済系の授業などに登場する回帰不連続デザインとかは、この辺の延長線にあるので。
局所線形回帰モデル*81や、グローバル線形回帰モデルなどがトピックになります。
そしてセミパラに至ると、部分線形回帰やシングルインデックスモデル、セミパラメトリック一般化モーメント法などに至ります。
こんなもんで優なんか取れるか!?!?!?
そう、計量経済学だけは、実は良(B)でも博士課程に進めます。
しかし、そこは天下の東京大学。なんと優上(A+)相当の成績をとった学生が2人も居たのでした。ちゃんちゃん。
とまぁ、発狂しそうな速度と濃度で進む計量経済学ですが、指定教科書はGreenとHansenです。
このうち、Greenはいわゆる第7版が1200ページ*82にも及ぶ、いわば「鈍器」でございまして、発狂した経研生による殺人事件の凶器の1つとしても有名(大嘘)です。
ただ、分からなくなったときとかコースワークが解けなくて真夜中に気が狂いそうなとき、詳細で分かりやすい本書は、孤独な経研生の友人兼枕として大変重宝されます。
ちなみに、僕はこの鈍器をGUT内の気の置けない友人であるKt君に安価で譲ってもらった*83御陰で、何とかコースワークを生き延びました。
改めてここに感謝を述べておきます。
他にもHayashi*84とかが計量経済の教科書としては有名で、日本人が書いているので非常に読みやすいのと、コースワークと章末問題が被ってたりして困ったときに読むと重宝しますが、古いので最新の分野には対応しておらず、あくまで副読本感があります。
しかし、ここで耳寄りな情報なのですが、なんとGreenの巻末付録の数学の章とHansenは、ググれば分かる通り、著者によってタダでPDFが公開されています。
そう思うと、確かに150ページほどあるものの、Greenの数学付録は春休みの予習用に最適です。
計量経済学1を生き延びるために必要な基礎部分のエッセンスが詰まっていて、皆タダで使えて友人*85との輪読もしやすく、そして、慣れない英語表現に慣れることが出来るので。
また、気になるなら、同じHansenでも"Econometrics"ではなく"Introduction to Econometrics"を読んでみるのも手です。
やっぱりタダなので。
ただ、最初は慣れない英語を読むのも多くの人にとって大苦労だし、特に数学の極値みたいな計量経済学を英語で学ぶのは英強以外には非常な苦痛であり、コアコースが始まった春以降の余裕の無さでは、体力をこの上なく吸われることもあります。
とはいえ、日本語による計量経済学の教科書は長年良著が存在せず、翻訳もまた、古くなってしまっているものが多かったのが近年までの実情であり、先輩方のブログなどにも何も登場しないことが多いです。
しかし2015年以来、最近ようやく日本語による書籍が少しずつ充実してきているらしく、幾つか参考になる教科書が充実してきました。
例えば、最初のうちは難波「計量経済学講義」が救いとなると思います。
主に計量経済学1の範囲をカバーするこの教科書は、日本語で、薄く、そして数学の付録が充実したうえでエッセンスの詰まった良著であり、時々参照していました。
また、計量経済学2で困ったときは、末石「計量経済学 ミクロデータ分析へのいざない」が役に立つはずです。
こちらはより発展的*86な内容となっており、日本語で、薄く、やっぱり重要なトピックをカバーしています。
こちらは週数回は読んでました。
何より、両者ともに嬉しいのは2000円前後だということです。
たったバイト2時間分のお金で、何時間も理解を早めることが出来ます。
ちなみに、難波明夫先生と末石直也先生は、不思議なことに御二人とも神戸大学大学院の教授です。
東京大学大学院経済学研究科は正直、経済学の国際共通語たる英語に適合できない人はドロップアウトするしかないのが暗黙の前提になっている世界観*87なので、まさしく神戸大学大学院の教育の手厚さを感じる瞬間です。*88
ただ、やっぱり詳細な数式とかは洋書かスライドにしか無くて、結局は理解の助けにはしつつ、最後はスライドを理解できなければ死ぬしかないんですけどね。
終わりに
以上が文系大学院生の、世間で言われる「猫のように暇で」「ニートのような」「趣味に耽溺している」生活です。
まぁ、実際多少は日常に応用してみたりもするのは事実ですし、欠片すら面白いと思えないならそもそも来ないのは間違いない*89のですが、そんなに楽で良いものではありません。
モラトリアムの延長気分で来ると地獄を見るのではないでしょうか。
よく研究室に泊まってる理系の院生を見ても、ゆるふわモラトリアムだと思えるくらい社会に染まってしまった後なら兎に角。
それに、経済という分野は、結局は政治制度とか金銭による判断から逃れられない分野なだけに、聞いてて滅入る部分も結構あります。
夢の新技術や、好きな歴史や文学を追うこととの違いがあります。*90
ただ、来るだけの価値がある場所だとも思います。
何故なら、例えば世間的には非常に高度な統計学を扱えるようになるからです。
何を隠そう、私が大学院にきた理由も、この辺が一番大きいです。
時代の流れ的に最新のデータサイエンスは今後ますます拡大を見せ、恐らく義務教育プログラミング必修化とかもあって、データに基づく判断と言うのはメジャーなものになっていくと思われますが、下手な理系の何十倍も*91、その技術を高度に身に着けられます。
また、理系では統計学は機械学習の授業として行われることも多いらしいですが、機械学習が予測メインなのに対して、より供給の少ない因果推論の分野で、社会科学という実験室の環境よりはるかにデータが劣悪であることが前提のデータの扱いを学べます*92。
それに、最近はよく個人的に電気工学科の人と話したりするのですが、この辺の行列とか解析学とか統計とかは共通言語たり得るので、割と話も弾みます。*93
学部生のころなら、チンプンカンプンで裸足で逃げ出したことでしょう。*94
統計以外では、例えば日々英語でボコボコにされてるので、英語力は伸びます。
ただ、入国制限下の現在は授業に留学生が居ないので、期待していた留学生フレンドは全然居らず、今もどうしようか試行錯誤の中ですが。
あと、因果推論を続けるという意味で、永遠に「それは相関か、因果か」とかも日々考えてるので、論理的思考に強くなった気がします。
あと、単純に「無限にやることがあって圧殺されそうなとき、いかに正気を保ちながら短時間でリフレッシュして極限状態を乗り切るか」的な能力が身に付いた気もします。
まあ、挙げればキリがないのでこの辺にしておこうと思います。
良いオチが思いつきませんでしたが、お読みいただきありがとうございました。
正直、20000字は書きすぎた感が否めない。
犬上ちょこ
参考文献
昔日の先輩方のブログ
いろいろ詳細が書いてあったり。
更新が途絶えてしまってるので、詳細は不明。
修士コア科目の予習に有用と思われる本 - Sitting in an Armchair
マクロ経済学の勉強に参照した本まとめ - Sitting in an Armchair
苦労してそうな先輩のブログ。Baglianoとか、上で挙げたほんの一部はココで知った。
思うことは皆同じらしく、今読み返しても同じ末石計量を発見してたり、GreenのAppendicesを勧めてたり、親近感が強い。
とても古いので何かの役には立たない。
でも、読んでると妙に親近感が湧く。
それにしても、この文章に癖がある感じはどこかで見たことある気がしてならないんだけど、どこで見たか思い出せない。うーん…?
制度面等で極めて正確な情報が載っている。
古いので少し違うものの、授業の詳細とかも書いてあるので便利。
当時の計量はWoodridgeを使ってたらしく、詳細を見てもGreenでボコボコにされた民としては今より楽そうに感じるが、博士課程に進みDC1をとれるような優秀な人でもコアを落とすことがあるというのが良く分かる。
また、院試に関しても非常に丁寧に色々ぶっちゃけ話も含めて載っている。
Wikipediaは中身が古くなっているので読んではいけないことがよくわかる。
大学院という場所に関して
近畿大学の星河先生の丁寧なページ。
東大経研の岩本先生のページ。
就職事情などは20年経ってしまたので、今はこの記事とは比べ物にならないほど厳しいらしいが、カリキュラム設計などに関しては変わっていない。
大学院受験・院試に関して
さらっと受験例に、経済学研究科が実は難しいという内容が書いてある。
【2021年最新版】東大院試の倍率【研究科ごとの難易度】 | ほぐ&らむの研究所
意外な話だが、文系なので全然知られていないものの、実は東大経研は東大の数ある大学院の中でも一番倍率が高いらしい。
理系と違って楽だとか言ったやつ誰だ、出てこい(◇大学院入試の研究科ごとの難易度について (異論は認める) - 学歴ロンダリングマンの悲しき末路)。
筆記が中止になった僕らの話より参考になりそう。
実は経研を受けた内部生(東大経済学部生)も、当時で5人に1人は落ちる(筆者注:現在では1.3倍~1.5倍まで跳ね上がり、4人か3人に1人は落ちる。)という恐怖のデータが載っている*95。
また、当時の全体の倍率は3.3倍程度だった(筆者注:現在は約4~5倍)らしい。
少し古いけど、筆記対策の教科書とかも載せてくれてる。
書いた人は横国出身らしい。外部生向け?
東京大学経済学研究科の2020年度院試に関する覚書 - 経済学修士残酷物語
残酷物語というタイトルが非常になじむ。
結構シビアに内容が書いてある。おおむね正確。
研究計画書の参考資料
経済学部生お役立ち情報がたっぷり。
Economics of Aging; 加齢経済 - 留学情報
東北大のページ。特に下は吉田先生の丁寧な例まで載っていたが、リンク切れの可能性あり。
http://user.keio.ac.jp/~kiyota/kozo/Courses/Proposal_j.html
*1:確かに、某芸術史系の先輩の話を聞いてると、そんな生活してる雰囲気もあるけど。
*2:実際は学部で就職する人も多いし進学率は分野次第だが、キャリア上でハンデになることは意外と少ない。就活してると結構感じる。
*3:首席論文。とった人が一流の経済学者になることも多い、経済学者の登竜門。
*4:3ヶ月は前が良いと思う
*5:課長・部長級クラス数名含む
*6:状況を解説したら、キャリアコンサルも「普通、本選考でもそんなのないよ」って唖然としてた。
*7:内部生は卒業単位より余分に選択科目から大学院との合併授業を履修すれば、既定の範囲内で単位を先取りできる。
なお、専門科目は持ち上げ出来ないという情報は詳しい人しか知らず、教務課も上がるまで教えてくれないので、毎年何人も必死にとった難しい大学院合併授業の専門科目単位を持ち上げられず泣く。
*8:Math Camp。学問版ビリーズブートキャンプ的な?
*9:TOEICと違ってメモを取ってもいいが、TOEICと違ってSpeakingとWritingのある4技能試験で大変なので、受験したい人は対策は早めに。
*10:経済学の試験で滅茶苦茶点がとれれば60点でも受かると噂されているが、足かせにしたくなければTOEIC730点級の80点が必要と噂される。少数意見に、実は経済学の成績しか見て無くてTOEFLはほとんど意味が無いという噂もあるが、真偽不明。
*11:関数の上位概念
*12:理系向けに例えてみるなら、苦手な国語や社会で延々と法律の解釈法や古典解釈に必要な事前知識を英語で詰め込まれてる感じかもしれない
*13:経済学の大学院では国際的に大体共通のカリキュラムとして、研究以前にまずは基礎を習得すべくコアコースをこなすことが求められる。
*17:実際Rは使えたので、その回のTAセッションには出ず資料だけ見て済ませた。
*18:今年はネイティブの准教授を含んでたが、真の敵はネイティブではなく、抑揚も無く小声で早口な英語で話す日本人の先生だったり。
*22:メディアン
*25:ただし、コロナ禍で研究室の使用頻度が低く相談が円滑でなかったのも拍車をかけた可能性があります。
*26:被って2個も出ると、結局その週は死に物狂いになる
*28:大学院生なので、足りないものは自分で学ぶのが当然といえば当然な気もします
*29:実を言うと、科目によっては修士で終えるつもりの人はWordでも良いと言われてたんだけど、大体チーム組んでる人に博士目指す人が居るのでそうなる。
普段その優秀さに助けてもらってるから仕方ないね。
*30:ただし、東京大学経済学部は教養学部と合計すると、何だかんだ法定卒業単位の124単位を超える136単位が卒業最低単位になるし、僕も150単位以上とって卒業してるので、世間一般の大学生よりは忙しい。
*31:経済学の本場はアメリカなので、優秀過ぎる人はアメリカに出ていく。
ちなみに、QSシモンズとかTHEの大学ランキングで東大の経済系分野は世界20位から30位くらいで、英米以外ではEU圏含め一応世界的にもトップクラスらしい。
ただ、そもそも大学ランキングに意味があるかは疑問だよね。自分の実力が大切。
*32:同期のA君とか。めっちゃ良いやつで大好きなんだけど、皆と土日も無かったよねって話して共有概念であると確信したうえで同じ話出したら、「僕は土日は休んでたけど…」って微笑んだ。バケモノか。
*33:失踪状態なので、ネッ友に心配されてた
*34:おかしいな、研究もしてないのに
*35:犬上調べ。サンプルが少ない
*36:研究用の修士号ではなく、専門職学位をえて業務等に活かすのが目的なので、ある意味当然。
*37:実は正式には大学院でなく大学院公共政策研究・教育部である
*38:激怒したかは噂だが、事実として外部からの履修人数制限自体はある
*39:博士課程行かないけど受けた。可は恥ずべきだし、計量経済学をやるために大学院に入ったので。
*40:Mathmatics for Economics
*41:和名不詳
*42:非常に重要
*44:lattice。もしかしたら「束」の方が訳として正しいかも。
*45:約50年前の教科書で最新の定理とかは載ってないけど、分かりやすい洋書の名著。
*48:経済学部生でこれを知らないやつはモグリ。
*49:洋書
*50:海外Ph.Dではよく無限に文献を読まされると言うが、数学を使う学問では無理な気がする。
実際、数理科学研究科みたいなところでは、そういうことはしないらしい。
数学の証明を1日に100ページも読んで完全に理解できるやつが居たら是非知りたい。世紀の天才か、モグリである。
*51:多分1/3くらい。
*52:ラグランジュ乗数法はt=0, 1, …, Nみたいな離散時間だが、ハミルトニアンは積分形で連続時間について解ける
東京大学経済学部の偉大な2宇弘の1人。
なお、もう1人はイデオロギー色を排除したマルクス経済学である宇野学派を打ち立てたことで高名な宇野弘蔵。
宇沢先生に関しては、詳しくは東大経友会報の追悼号を参照。
*54:林文夫先生。存命。
*55:Recursive Macroとか
*56:名著だが、マンキューレベルの教科書で基礎をしっかり固めて無いと取っつきづらい。
*57:ただし、数学的には学部生でも読めそうな甘い内容になってる
*60:和名:修正ディッキー・フラー検定
*62:噂では、元々信号の複合とかに使われたりする関数らしい
*63:和名:ベバレッジ・ネルソンまたはビバリッジ・ネルソン分解
*64:つまり、これだけを読んでデータサイエンティストになれると思ったら大間違い
*65:後述
*67:3年の時は重要だと気づいてなかったので、指定教科書が英語のWoodridgeなのと、黒板に英語で爆速で書かれる板書に怯んで撤退した。4年の時は他に最優先でとりたい単位と被ったのでとり損ねた。
なお、研究休暇とコロナ禍を経て担当の先生が日本語で資料を作るようになり、かつ指定教科書もNLSAに変わったので、現在なら前ほど困らないはず。
*68:薄い。数学的な重要部分を多く含みつつ、丁寧に解説し、Rのコードまで含んでいる神書。
*69:発展的な内容まで網羅しつつ、数学的な内容を極限まで抑え直感的理解をグラフ等で形成してくれる。ゼミとかで論文の輪読が始まる前に読んでおくと、実証研究の論文を理解できるようになる神書。
*70:最低限読んでおくと計量経済で足を掬われないかもしれない。
*71:Ordinary Least Square, OLS回帰
*72:Projection
*73:ワルドは、第二次世界大戦中のイギリス空軍機の撃墜データ分析で、「帰還した機体が撃たれてない場所をより厚い装甲に帰るべき。なぜなら、そこを撃たれた機体は帰って来なかったからだ」と、サンプルセレクションバイアスを指摘したエピソードが有名。
*74:Generalized Least Square, GLS回帰
*75:Instrumental Variable Method, IV
*76:2Stage Least Square, 2SLS
*77:Generalized Method of Moment, GMM
*78:Nonlinear GMM
*79:Maximum Likelihood Estimation, MLE
*81:Local Linear Regression Model
*82:最新版は第8版。
*83:限りなく薄い今回のGUT要素
*84:トービンのqが実証研究に使えることを証明した、前述の林文夫先生。
*85:3月初頭の入学手続きに一番乗りして、来るやつに片っ端から声かければ数人は出来ると思う
*86:これでも自称、中級計量経済の教科書だというのが恐ろしい
*87:筆者の所感
*88:別に東大の先生方が教育熱心でないと言っているわけではないが、彼らは人格的には非常に温厚篤実でありつつ、学問にはゲロを吐くほど厳しいので、こういった手厚さではなく、古典的な例えで言う所の「獅子が我が子を谷に落とす」方針であり、僕のようなポンコツは這い上がれないだけである。
*89:OB訪問とかしてみたら、社会人の皆さんが仕事は嫌だ怠いと言いつつ意外とやりがいとかを感じてたりするのと、責任の重さの違いとかはあるものの、根本的には多分一緒
*90:もっとも、これらの研究にはこれらで別の独特の辛さが沢山あるし、楽だと言いたいわけではなく。ただ、経済が特に夢を抱きづらい分野だというだけです。
*91:物理系の人と分かってる前提で話してて「あ、その、統計は分野的にわからないので…」って言われたこともあるし、工学部の後輩の課題を助けたこともある。
*92:稀に勉強熱心な理系の人が計量経済の授業に出てきて「それってベイジアンじゃダメなんですか?」って聞いて、先生にボコボコにされてたりします。
ベイジアンや最尤法は、確かに分布が事前に理論や経験から推定出来たり判明してたり、あるいは事前分布の形に関わらず事後分布で正しいパラメータに更新できそうなくらい試行回数の多いデータなら非常に強力ですが、社会科学データや経済データには通用しないことも多いです。この辺で、情報系とよく喧嘩になる。
*93:運動方程式を解いてオイラー方程式が云々とか話してる。
*94:ただし、複素案数やフーリエ変換は対象外なので、よく話してて出てくるけど頭にハテナが一杯なのは従来通り。複素数が回転の計算に便利なのは理解したけど、Z変換って何?
*95:つまり、内部でも水準に達しない学生は容赦なく落とされる
あゝ、稲田姫様(前編)
※この記事は、サークル「東大幻想郷(以下、GUT)」の、アドベントカレンダー2020内の記事の1つとして書かれたものです。
※東方Projectが分からない知人向けに最初の方に脚注が入っています。ご存じの方は特に脚注はスルーしていただいても多分大丈夫です。
※ところどころコロナ禍等における暗めの話が入ります。もしかしたら、人によっては読み飛ばしていただいた方が良いかもしれません。
初めに
皆さん、こんにちは。
あるいは、初めましての方も多いかもしれません。犬上と申します。
突然ですが、タイトルを見て、皆さんはどのような記事を想像されましたか?
恐らく、東方サークル[1]のアドベントカレンダーだし、タイトルに「稲田姫様」と入っているので、秋姉妹[2]関連で何か書くのか。
あるいはGUTというサークルには、東方原作[3]に関して大量のスコアタ[4]勢やルナシューター[5]が存在するので、原作の風神録関連で何か攻略法とかの話だろうか、と思われた方も多かったのではないかと思われます。
ですが、今回の御話は残念ながら秋姉妹関連では無く、それどころか原作関連でもありません。
どちらかというと、ちっぽけではありますが、人生とか、信仰とかの話になります。
ただ、先週はキャパシティを完全にオーバーして深夜5時とかまで起きていたりした日があるような状態だったので、少し書くのが遅くなってしまいました。
なので、本来の投稿日である19日当日の午後になってもせっせと記事を書いていたのですがようやく気づいたのです。
あれ、これ前置きが長すぎて書き上がらないうえに、前編だけで23日の枠に分割してもタイトル詐欺になりそうじゃない???
ということで、思い切って逆張りをして、いっそ後編から公開してもらうことにしました。そのため、前編が本日公開となっています。
楽しく読んでいただけましたら、幸いです。
1.経緯
ことの契機は、人生で何度目かの「その時一番の挫折」を味わったところから始まります。
有り体にいえば、今年度の春採用が終了する7月までに内定をいただけませんでした。
今年はコロナ禍によって採用市場は大混乱し、ひどい目に遇いました。
また、コロナ禍のせいで狂った予定を責任者として取り戻すために色々と就活以外で奮闘しなければいけない場面も多く、何兎かを同時に追う状況で精神的にすり減りました。
それでも何とか頑張り続け、6月中までは何とか良い具合に回すことが出来て東証一部上場企業の何社かに最終選考まで呼ばれていたがために、特に反動でダメージが大きかったことを今でも記憶しています。
それだけに思う所も色々と存在して、今もつらつらと書いていたら気づけばどんどん関連する様々な恨み辛みがあふれ出て、A4サイズ4枚分ものドロドロとした内容の下書きが仕上がってしまうほどです。
ですが、それ自体は今回の本題とは関係ないので削除しました。
今回の本題は恨みつらみを聞かせることではなく、「そのような辛いときにどのようなアプローチがとれるか」と、「稲田姫様は神!」という話だからです。
「人生山あり谷あり」とは昔から言われることですが、だれの人生にも辛いことや手ひどい挫折感の1つや2つ、いくつかはあるものです。それは、私一人の人生ですらそうです。
例えば、一番わかりやすい例だと私は大学受験でも浪人していますが、不合格でもあとちょっとだった人々と違って、世間的には例えもう1年挑んでも到底合格など望めないと言われているような落ち方をしました。
最終的には志望校に合格できたとは言え、高校時代の知人の中には露骨に嘲笑してくる人も居ましたし、精神的なプレッシャーも結構あったことを覚えています。
浪人未経験の方向けにもう少し御説明すると、浪人生向けの校舎というものは最初こそ皆楽しそうなのですが、受験前になると淀んだ重苦しい空気がするようになったりします。
例えば僕の知人は発狂して、せっかく彼の第2志望校の合格を貰ったのにそれを捨てて東大に全てを賭けて捨て身の突撃をして失敗し、より志望度の低い大学へ行きました。
ですが、皆自分を保つのに精いっぱいで、誰も彼を止めて助けられない。意外とそんな世界です。
もちろん浪人できただけ恵まれているとか、最後お前は志望校受かっただろ等と思われる方もいらっしゃるとは思います。
そうおっしゃるのも御尤もです。僕にそれは否定できませんし、今でも周囲の環境に深く感謝しています。
なので、そのような方は、例えば「夜と霧」はいかがでしょうか。
「夜と霧」は、ヴィクトール・フランクルという人によって1946年に出版された戦争体験記です。
フランクルは非常に優秀な人で、彼はオーストリア出身なのですが、あの心理学の大御所であるアドラーやフロイトに直接師事し、ウィーン大学医学部精神科教授やウィーン市立病院神経科部長などを歴任したという凄腕の精神科医であり、脳外科医です。
一見ここまでの経歴では彼は非常に幸せそうな経歴なのですが、彼の人生はここから暗転を迎えます。ナチスのオーストリア併合です。
ユダヤ人であった彼はまず全ての役職を解かれ、そして最終的には収容所送りになります。そして家族全てを失い、以前に自身の確立したロゴセラピーの手順を自身に適用し、運命の神が偶然微笑みかけた彼独りだけが収容所から生還することになります。
ここでヴィクトール・フランクルを挙げたのは後でも少し出てくるからなのですが、他にも、うちの祖父の話はいかがですか。
うちの祖父は戦前、曽祖父の仕事の関係で旧植民地に住んでいたのですが、詳しい話はともかく戦争の中で両親を失います。そして更に昭和20年には、通っていた旧制中学校を繰上げ卒業させられ徴兵されます。
たまに「旧制中学生は学徒出陣していない」と詳しい方に叱られることがあるのですが、それは本土の話です。
一部の植民地や離島では、当時から内務省に憲法違反の可能性を指摘されていた陸軍省令改正第58号及び改正第59号により、14歳以上の男子を「志願」の名目で防衛招集することが出来ました。沖縄の「鉄血勤皇隊」の話が有名ですね。
それでも激戦地に送られなかっただけ良かったのでしょう。
祖父は米軍の飛行機と命がけで鬼ごっこしたりすることはあったようですが、生きて終戦を迎えることになります。そして、光復による資産接収後、遺骨と身の回りの品だけを手に兄妹で本土へ引き揚げます。
人生は、本当に様々です。
そのため、私の経験がまだまだ甘く見えるという人も沢山この世に居るかもしれないように、あなたのしんどさが他人の目にどう映るかはわかりません。
ですが、あなたの人生には必ず貴方が「もうだめだ」と思うようなしんどいことや辛いことが、起こらないに越したことはありませんが、起こる確率というのは低くないでしょう。
あるいは、そこまでいかなくても、日常的にストレス的な状況が延々と続くような状況だって、あったりしますよね。
そんなときに、どうやってその「しんどさ」と付き合って生きてゆくのか。
今回は、しんどい期間に探し求めて収拾し、そして助けられた情報の一部を共有したいと思ってこの文章を書いています。
いつか、どこかの、しんどい貴方へ。
※この話は飽くまで応急処置的な話や、ある程度のしんどさまでを乗り切るための話です。もしも諸般のストレス症状が2週間以上続く場合は、精神科や心療内科、またはカウンセリング等の受診を検討してください。
2.ストレスと「しんどさ」
2-1.ストレスを測る
さて、ではそもそも精神的に「しんどい」状況とは一体何なのでしょうか。
例えば、軽度なものだと「期待されていた仕事に失敗してしまって落ち込んだ」みたいなものから、結構しんどめのものだと「研究が上手くいかなくて焦っているのに、そのことでラボの助教に叱り飛ばされた」とか、色々あると思います。
ただ、個々の状況では残念ながら、それがどのくらいあなたのストレスになっているのか分からないと思います。
そのため、公的機関等が出しているストレスチェッカーを使うことが考えられます。
たとえば、NHK健康チャンネル内のHP「ストレスとは?原因や簡単にできるストレスチェックのやり方」には、心療内科の教授が編集した簡易的なストレスチェック表が載っています。
また、公的機関だと厚生労働省「こころの耳」でも、ストレスチェックを受けることが出来ます。ただし、基本的には働く方向けだったり、具体的な方策等は少なめだったりします。
結果はいかがでしたか?
ちなみに、この前までヤバかった当時の私のNHKのストレスチェック表は35点。本文中で専門家への相談等が推奨されているレベルでしたが、現在の私の点数は18点で黄色信号未満でした。
また、厚労省のチェックでは当時は「非常に高いと考えられます」で産業医等への相談が推奨されていましたが、現在は「低いと考えられます」とかでした。
さて、ストレスチェッカーをしているといくつか気になる症状が出てくることがあります。例えば、「朝から寝たのにぐったり疲れている」とか、「いつも憂鬱である」とか。
健康な状態だと「朝からぐったり疲れているって、まぁ怠いってことかな。それならよくあるわ。はい、『よくある』。うわ、私高めかよ(笑)」などと思ったりもしますが、これはもしかしたら、もう少し深刻な話かもしれません。
例えば、「寝たはずなのに1時間半以上、身体が1日中働いて帰ってきた時のようにしんどくて、起き上がれないくらいぐったりしている」とか。
なので、まぁ寝起きに怠いのは多分「しばしばある」レベルでは無いでしょうか。
え、何故かって?
実際にそうなったからです。
実際、ストレスチェッカーの例に限らず、ストレス反応とは様々なものです。
例えば、それまでは夜に目が開くことも無く8時間眠れたのに、必ず1時間半ごとに目が覚めるようになり、6時間以上は目が冴えてしまって眠いのに眠れないとか。
あるいは、平易な文章を読んでいるはずなのに目が滑って文字が音読しないと読めず、終いには、ただ授業を聞いているだけかつそんなに難しい内容でも無いはずなのに、何も頭に入って来ず、どんなに集中しようとしても理解できないとか。
それとも、もはや身体が熱こそないものの風邪の時のように異常に怠くて椅子に座っていられず、オンライン授業や在宅勤務中に近くのベットにへたり込んでしまったりとか。
ただやることをしているだけなのに、突然涙が零れ落ちて止まらなくなったりとか。
胸のあたりがいつもずっしりと重くて、時々締め付けられるように息が出来ない、とか。
ただし、そこまで来ると最早あなたはストレスチェックをしている、などという状態ではない可能性もあります。
2-2.抑うつ症状とストレス
たとえば、NHK「軽症のうつ病の症状とチェック方法、基本的な治療、効果的なセルフケアを紹介」や、「注意が必要な中等症や重症のうつ病とは?診断基準、薬などの治療法」を見てみましょう。
うつ病の簡易チェック表が載っていると思います。
上記の表は軽症の物ですが、オレンジ色の項目の二つ目が欠落したうえで合わせて6~7つ当てはまれば中等症の可能性が、8つ以上当てはまると重症の可能性が示唆されます。
あなたは幾つ当てはまりましたか?
最近の私は「当てはまる」の基準によるかな。ガバガバ基準なら4つくらいかな…、程度ですが、追い詰められ始めていた時の私は基準をガバガバにしなくても5つで、かつやるべきことは回せる状態。
そして、一番追い詰められていた時の私は8つ確実に当てはまり、もはや最低限のことにも手が回らない状態でした。
ただ、気を付けてほしいのは、これはあくまで「専門家に相談するための目安としてのセルフチェック」だということで、あなたの自己診断で「自分はうつ病に間違いない」とか思うのはかえって危険であり避けるべきだとされています。(逆にいえば、点数的には大丈夫だからと違和感を覚えてもそのまま頑張り続けるのも危険です。)
記事に書いてあるように診断自体やその基準は、他の病気との区別や日常生活にどのくらい支障をきたしているかによって変化してくるからです。
実際、僕が深刻な状況から抜け出した後でカウンセリングルームに行ってみた際の臨床心理士さんの話は「病院にかかったら『適応障害』の診断が下りた可能性が十分にある」というものでした。
この「適応障害」は医学的には似たような「抑うつ症候群」の一部へ入るものではあるものの、いわゆる「うつ病」とは少し違うものです。
(詳しくは、NHK「強いストレスが原因の適応障害。症状や治療法を解説」から御覧になれます。)
つまり、万が一深刻なレベルで当てはまった方は、産業医や大学病院の精神科、大学のカウンセリングルームや保健センター、地域自治体のヒアリングサービスが等に相談すべきであり、自己診断で誤った対処法を繰り返すことは望ましくない可能性が高くあります。
(相談先が分からない場合は、先の厚生労働省「こころの耳」内の「相談する」内でお探しいただけます。)
また、相談は可能なら早いうちにするべきです。
例えば私の場合は、状況が深刻になり始めたときは先のように、まだ睡眠等に異常をきたし始め自身でも違和感をおぼえる程度の憂鬱さを感じては居たものの、一生懸命やることは回せて必死で動き続けることが出来ました。
しかし、一時的な休息期間を挟んだのちの3か月後には、逆にやるべきことは減ったはずなのにもはや最低限のことすら完全には回せない状態に陥りました。
ただ、実際は難しいもので、当時の私の走り書きのメモが残っています。
部屋で泣き叫んで一時的に楽になった時に今のうちにと急いで書いたものですが、上記のような抑うつ症状と呼ばれる様々なストレス反応のメモの傍に、追加で書いてあります。
「感情と理性がすれ違う。おかしいと理性は訴えているが、どうにもおかしいという風に心から思えない。」
「おかしいと考えても修正できない。『カウンセリングを受けたら誰かに聞かれてしまう』『診断が下りたら人生が終わる』『誰かに少しでも助けを求めたら迷惑になってしまうから助けは求めないべき』などに関しては、自分でも認知がどうやら歪んでいるらしいとい考えているが、残念ながら自分で納得というか、修正することが出来ず固定パターンとして当たり前となっている。多分確実におかしいとは思うが、治せる気がしない。」
残念ながら、パソコン上のデスクトップに置いておいたので何か書いたことはかろうじて記憶にあるのですが、何を書いたかの詳細は記憶にありませんでした。
当時の記憶の一部が欠落しています。覚えているのは「『専門家に相談しようと思う』こと自体がしんどかった」ことくらいです。
この記事を書くために改めて見返して「そんな感じだったかな」という感じですが、なので行動を起こすのは実際には少し難しいのかもしれません。私も結局、一番つらい時期には行動を起こせませんでした。
今思うとカウンセリングルームは受診しておくべきだったかなという感じです。
なにせカウンセリングルームは診断が出ないので、当時の「診断が下ったらどうなるのか」という恐怖感とは無縁だからです。
できたかどうかは別として。
ちょっと怖い話ばかりしてきましたが、そもそもストレスってこんなに身体に何か起こすのか、という疑念がある方もいらっしゃるでしょう。
大学の保健センターが9月にやっていた「コロナ禍のストレスにどう向き合うか」的な講演のメモが正しければ、ストレッサー自体は様々だがストレス反応が身体に出やすいかどうかは遺伝等で人それぞれであり、そもそもストレスかどうかも捉え方や対処能力により様々とのことです。
つまり、例えば私の何人か居る就活に失敗した友人たちの中でも「親に1年は留年していいって元から言われているから、もう1年遊べるわwww」とか笑っていた友人は一人妙に元気だったように、同じ出来事でも見方で大きく変わるということです。
そして彼が妙に元気な原因を考えると、果たしてストレス反応の出やすさの原因が、本当に「個人の強さ」や「責任感の無さ」なんて問題のものかとは、とても思えません。
ですが、かといって個人の遺伝が偶然強く症状が出づらいだけの人もこの世には居ると思うので、結局は個人差だけど、少なくとも貴方が「精神的に弱いから」とかいうネズミも食わないような腐った論理では無いということではないでしょうか。
3.心理学的に「しんどさ」に付き合う
さて、ここまでは「ストレスとは何ぞや」とかの話でしたが、次に「ストレスと付き合う方法」を見て行きましょう。
先のように諸症状が2週間以上続く方は、このような応急対処をしている場合ではなく、まず何がしかの信頼できる相談機関で専門家に相談すべき状況なのですが、そこまでではないという方向けです。
残念ながら世間では深刻な状況が続く現在ですが、そのアウトプットの1つとして諸機関が必死になって、いかに現状と付き合うかという系統の情報を発信しています。
インターネット上には様々な信頼できない情報も紛れ込んでおり、玉石混交なのが心配な所でありますが、その中でも信頼できる機関が発信している情報もいくつかあります。(この文章も、どちらかと言えば「石」かもしれませんね(笑)。)
例えば、例えば東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野が運用する「いまここケア」や、国立精神・神経医療研究センターの「コロナ心の支援情報」の項目「不安」、厚生労働省の「こころの耳」内の「ストレスへの対処」、「NHK健康チャンネル」内の「こころの症状」などです。
本質的にはこれらを読み込んで自身で勉強してもらうのが専門家でもない私が抜粋した情報などよりも極めて効果的かつ正確で良いはずですが、「そんな時間無い」という方や「まだ興味が無いから概要だけくれ」という方向けに、簡単に紹介します。
3-1.ストレス・コーピング
例えば、一番初めに挙げられることがあるとすれば、それは「ストレス・コーピング」という概念です。
皆さんはしんどい時に何をしますか?
例えば趣味のガーデニングに埋没したりだとか、あるいはとりあえず友人と話す、という方も多いと思います。そういう、いわばストレス状況に晒された時に少しでも気が楽になるよう何をしようか、ということが「ストレス・コーピング」であり、それを纏めた表を作ったりして沢山持っておくと良いとされます。
(「ストレス・コーピング」について詳しく御覧になりたい方は、NHK「ストレス対策徹底解説 原因や解消法、注意したい病気」等を御覧ください。)
しかし、ここには少し落とし穴があります。
大学で心理学の専門家が12月に行っていた講演で私がとったメモが間違っていなければ、「適切なストレス・コーピング」と「不適切なストレス・コーピング」があるとされるのです。
では、不適切なストレス・コーピングとは何か。
答えは、「その場しのぎで、長期的にはストレスを増大させてしまう物」です。
例えば、「お酒を浴びるように飲む」が分かりやすいのではないでしょうか。
確かにお酒を飲めば一時的に楽になる可能性は高いです。しかし、最終的には貴方にいくつかの病気のリスク、例えばアルコール依存症だとか、肝硬変だとか。そういう物をもたらすことになります。また、酒癖の悪さ等による酒席上の失敗等のリスクもあるかもしれません。
また、他にも私が正確にメモを取れているならば、「タバコ」「テレビの見過ぎ」「寝すぎ」「現実逃避」「お菓子のやけ食い」「周囲に当たり散らす」「先送りの癖」「独りで引きこもる」こと等が、あまり適切でないコーピングの例として挙げられています。
では、何がコーピングとして適切なのか。
例えば、「いまここケア」内の項目の一つ「『3つの密』に当てはまらない『安全な活動』を考えてみよう」には、考え方や沢山の事例が紹介されています。
その中でもリラックスをもたらすものとしては、例えばストレッチなどが挙げられます。ストレッチのやり方に関しては、NHK「体からリラックス!体を温めるトレーニング」や、同「体からリラックス!筋肉をゆるめるトレーニング」の他に、厚生労働省の妙に遊び心あるサイト「東京ストレッチ物語」とかがありますが、流石に細かく紹介していられないので、今回は割愛します。
また、アロマだとか好きなお茶を楽しむとか、花を眺めるというのもオススメではありますが、やっぱり今回は割愛します。
今回注目していただきたいのは、その中に入っている見慣れない謎の横文字。
そう、「マインドフルネス」です。
何だか胡散臭い感じの横文字ですね(笑)
3-2.マインドフルネス
マインドフルネスとは何か。
詳しくはWikipediaでも読んでいただければいいのかなという感じですが、元々は仏教における八正道の1つ「正念」の英語訳であり、ベトナム出身の臨済宗の禅僧ティク・ナト・ハンなどが広めた概念とされます。
そう、仏教用語です。
日本にも仏教は根付いているので、なんかその辺のヤバいヒーリング団体とかがやってそうな胡散臭さ自体は少し減ったかなという感じでありますが、一方で宗教がらみとなると、これが科学的なものかどうか少し心配になってくるかもしれません。
ですが、ご安心ください。
心理学的な「マインドフルネスストレス低減法」の始まりは、そういったアメリカ内での瞑想活動に参加し興味をいだいた分子生物学者でマサチューセッツ大学教授のジョン・カバット・ジンが始めたものです。
彼が始めたマインドフルネスストレス低減法は、瞬く間に効果を上げて広がっていくことになります。それも、科学的なエビデンスを伴った形で。
結果として今や心理療法の新潮流としてアメリカ国立衛生研究所の補助金をヨガやメディテーション以上にもらっているマインドフルネスですが、その概念は結構簡潔に表されます。
「気持ちが落ち着かないときのために -マインドフルネス入門-」(いまここケア)より
- 今ここでの経験に
- 評価や判断を加えることなく
- 能動的に注意を向けること
たったそれだけです。
そのため、広義には、マインドフルネスとはそれ自体が特殊な方法であるというものではなく、「マインドフルネス的なもの」が意外とこの世の中にはあるということになります。
何故マインドフルネスがストレスを低減させ抑うつ状態に効くのか、というのは簡単にいえば、滅茶苦茶賢い人間の脳が失敗の繰り返しを避けたり将来の危険を避けるために、ネガティブなことを思い出して反芻することや、逆に未来を過剰にシミュレートして不安になることを防ぐことが出来るかららしいのですが、詳しくは上記のサイト等を御覧ください。
あと、「デフォルト・ネットワーク・システム」と調べると、色々出てきます。
何はともあれ、マインドフルネスとはそういう物なのですが、では具体的にはどんなものがあるのか。
例えば有名なのは、音に耳を澄ます瞑想や呼吸法、セルフ・コンパッションのエクササイズとかです。いわゆる狭義のマインドフルネスはこちらですね。
このうち、呼吸法は「気持ちが落ち着かないときのために -マインドフルネス入門-」(いまここケア)や、NHKの「『マインドフルネス』とは?めい想の方法・効果と『呼吸のめい想』のやり方」から学ぶことが。
音に耳を澄ます瞑想はNHK「マインドフルネスめい想 ②音に耳を澄ますめい想」から。また、セルフコンパッションはの「苦しい気持ちを落ち着かせるセルフコンパッションのエクササイズ」(いまここケア)から学んでいただけますが、このうちのセルフコンパッションはどちらかというと「ザ・療法」という感じで、先の二つがより日常的な雰囲気の物になります。
もしかすると、このうちの呼吸法が一番手っ取り早く、そして禅に近くて馴染みの深いものかもしれません。
禅というとあの座り方(結跏趺坐)を想像すると思うのですが、そもそも究極的にはあれは背筋が伸びる姿勢だという話で、禅僧以外は出来る必要はありません。
例えば、臨済宗と違って警策で強制的に叩かれたり、公案について考えているのではなく無と化していたり、人の方でなく壁の方を向いていたり。より厳しい曹洞宗のホームページですら、普通に椅子座禅のページが存在しています。
また、座禅のページを見ても結跏趺坐だけでなく半跏趺坐が普通に紹介されています。在家の信者には結跏趺坐は不要なのです。
ましてや、マインドフルネス呼吸法に至っては最早足の組み方など関係ありません。
ただ背を椅子の背もたれから離し、背筋を伸ばして、吐く息と吸う息にひたすら「膨らんでるなぁ」とか「吐き切ってるなぁ」とか集中するだけ。
あとは雑念が浮かんだら、それを解き放つように再びゆっくり呼吸に集中しなおすだけです。
このとき、「頭を上から釣られるようなつもりで」とか「6秒3秒で」「8秒4秒で」とか言われたりしますが、それらも上記を実現するための具体例であり、究極的には可能であればなんでも良いことになります。
この2:1の呼吸というのも心理学的に落ち着きやすい呼吸だというだけの話で、マインドフルネスに絶対に必要な物では無いようです。
3-3.そのほかのストレス対処法
マインドフルネスに関して長々と書いてきましたが、もちろん、最初のストレッチやアロマ以外にもコーピングが存在します。
例えば、軽度の有酸素運動はうつ病に対して非常によく効くことが医学論文でも実証されています。そしてそれは、ウォーキングでも良いとされています。
他にも、不安が強いときには書き出してみるのが有効とされています。
書き出すことで、自身の中でグルグルと得体のしれない不安になっていたものが具体的に何であるかが分かるようになります。また、書きだしたことで、もしも忘れても後で思い出せるので良いやという気分にもなれるのです。
意識をそらすために、一週間以上先のことは考えないようにしてみたり、あるいは今可能なことに集中すること、掃除などをして注意をそらすことなども推奨されています。
あるいは、人間が居なければ犬や猫、ぬいぐるみ相手でも良いので、とにかく自分の言葉で思うことを表現して吐き出してしまうのも有効とのことです。
さらに、ダイアモンド・オンラインで精神科医の樺沢紫苑さんが書いた記事「精神科医が「絶対にやるべき!」と断言する朝のベスト習慣」によれば、朝の散歩がとても良いとされています。朝散歩が「朝日を浴び」「リズム運動である」ことで「セロトニン」の分泌に大変良いということが理由として挙げられています。
セロトニン自体は幸福感に影響する神経伝達物質であることで有名です。一部の抗うつ剤が、このセロトニンが再吸収されるのを阻害することによって濃度を増やすことで機能していることでも有名ですね。
また、「鬱になったらバナナを食え」という俗説でも非常に有名ですが、これはバナナがセロトニンの材料となる必須アミノ酸「トリプトファン」を大量に含んでいるからです。
まぁ、有名だってだけで同じグラム数でみればヨーグルトや豆乳の方が大量に含んでいるうえに、確か更にその数倍の量を納豆やそばが含んでいるんですけどね。
ヨーグルトが推奨されない理由は動物性たんぱく質がトリプトファンの取り込みを阻害するからです。そしてバナナが推奨されるのは、これを防止できるビタミンB6が多量に含まれているから。つまり、バナナヨーグルトが最強。
実際、追い詰められた時も途中でバナナヨーグルトを食べ始めたときは、記憶の反芻とか色々なものが起こりづらくなってビックリしたものです。プラシーボ効果かもしれないですし、最終的に追い詰められ始めてから3か月後位にはボロボロになっていたところを見ると、過信は禁物ですけど。
なお、同じ樺澤先生の記事「『うつ病の発症』コロナ収束後こそ注意すべき訳」では、
うつ病に関して、一般的に言えることですが、「大きなストレス」に直面しても、すぐに「うつ病」が発病するのは稀です。だいたい、2~3ヵ月かそれ以上のタイムラグがあります。
(中略)
うつ病とは、セロトニンという脳内物質が低下、枯渇した状態。私たちの脳には、ある程度のセロトニンの貯金があるので、すぐには枯渇しません、しかし苦しい状態が2~3ヵ月続くと、脳は耐えきれず「病気」として現れるのです。
東洋経済オンライン「『うつ病の発症』コロナ収束後こそ注意すべき訳」より
と記述されています。
追い詰められ始めてから実際にボロボロになるまでの3か月のタイムラグはまさしくこれだったのではないか、という気もします。
話を散歩に戻すと、散歩には「日光を浴びて」「リズム運動で」セロトニンを作れる機能以外にも、いろんな効果が期待されます。
例えば先のウォーキング代わりの抑うつに対処するための運動にもなりますし、あるいは散歩中に他所の家の前のガーデニングとかを見ることで、ストレス・コーピングの中で登場した「花を眺めて癒される」みたいなことも可能です。
さらには、歩くリズムに集中することで心が「今」に引き戻されるのでマインドフルネス的とすら言えるかもしれません。
そう、散歩は結構に良いストレス対処法なのです。
余談ですが、今はやりのガースー(笑)も朝散歩で有名ですから、首相に上り詰められるくらいに効果があるのかもしれません。
他にも、「日光を浴びて」「リズム運動」といえばよく公園とかでラジオ体操をしている人とかも居ますけれど、あれも軽度の運動かつ多少自然のある場所で、リズム感があるうえに元々健康促進用に開発されているので、合理的なのかもしれません。
また、ストレスと付き合うためには「人との付き合いを絶やさない」というのも大切だそうです。
実際、家族以外とは顔を合わせなくなった今年は最早オンライン面接で誰かの顔を見られるのすら何だかホッとして、追い詰められてからもキャリアコンサルタントとの面談だとかで話すと状況は大して変わってないのに意味も無く心が楽になったものですが、これには「オキシトシン」が関係するそうです。
オキシトシン自体は「愛情ホルモン」だとか「幸せホルモン」だとかと呼ばれ、主にスキンシップ等々、恋愛的サムシングで発生することが有名です。そして、それを聞くと恋人が居ない人々は「ちぇ」と思われるでしょう。
ですが別にそれは有名だというだけで、実際のところオキシトシンは動物とのスキンシップや、何ならお互いに顔を見て話すだけでも分泌されるそうです。
先ほども出てきた樺沢先生の記事「『うつ病の発症』コロナ収束後こそ注意すべき訳」にも、そのような話が登場します。
ちなみにこの記事は、先ほどの不安の書き出しをそのまま書いてあるわけではありませんが、アウトプットが心理学的に良いというの話の根拠でもあります。
また、コミュニケーションを保つこと自体の大切さも様々な媒体で訴えられています。
たとえば、国立精神・神経医療研究センター「こころの健康を保つために大切なこと」や、日本うつ病学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツ」などでもそれは訴えられています。
孤独を感じることは、精神の健康には大変よろしくないようです。
3-4.生活習慣を考える
さて、ここまではストレス発生後の対処法的な話だったのですが、そもそも一方で、実は「ストレスを発生させづらい生活習慣」というものもまた、存在するようです。
例えば、前出の国立精神・神経医療研究センター「こころの健康を保つために大切なこと」や、日本うつ病学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツ」、12月の大学内講演のメモを確認してみると、情報の過剰な閲覧に注意するように書かれています。
今やインターネット時代もSNS時代を迎えて巷には情報が氾濫しており、不正確な情報や煽り立てるような情報が蔓延しているのは歴然たる事実です。
それに加えて、旧来のテレビや新聞等の情報媒体も昔ほどの勢いを失ったわけでなく、日々我々は情報を浴びるように摂取している状態と言えます。
そのため、ついつい情報収集を意識して。あるいは特にSNS等だとわざわざニュース等を見ようとしなくても、無意識のうちに過剰にみている可能性があります。
さらには、人間の認知バイアスの関係で、自分でネガティブな方向へ偏った情報を集めてしまうこともあるようです。
そして、それを防ぐためには「信頼できる情報源を使用」し、「ニュースを見るのは夕方の30分だけ」など時間を区切るのが良いそうです。
また、それ以外にも「生活のリズムを維持すること」が主張されています。
人間の体内時計そのものがずれているという話は前出の「『うつ病の発症』コロナ収束後こそ注意すべき訳」にも登場しますが、体内時計のリズムを維持することが重要なようです。
これは自律神経等と関わっているらしいですが、基本的にはルーティーンのように「決まった日課や週課はなるべく同じ時間に」することが重要なようです。
日課には、家事・仕事・食事・運動などが挙げられており、特に一番重要なのは「朝起きる時間を一定にする」ことだそうです。
これは朝型人間になって必ず朝6時に起床しろという類の話ではなく、午前中の決まった時間に起きなさい、程度の話のようです。
一方、寝る時間に関しては一部でやはり同じ時間になるべくそろえるよう言及はあるものの、起床時間ほどは重要でないのか、特に言及がないものも多いです。
ただ、眠りやすくするためには「朝起きたら朝日を浴び」「昼寝は30分以内」として、「夜寝る前は明るい光は避ける」ことが大切なようです。
寝る前の明るすぎる光の典型的な例はスマホやパソコンの光のようですが、どうしてもやめられない方は、最近は一応夜間モードとかブルーライトカットアプリとかもあるので、そういうものも効くかもしれません。
私は消灯後はスマホの光を90%遮断することを覚えて、多少眠気を取り戻しました。
あとは、本人の思考法自体にも工夫が出来るようです。
例えば、随分前に出てきたヴィクトール・フランクルという精神科医の作品「夜と霧」では「生きる意味を見出すこと」が重視されています。
また、ハーバードビジネスレヴューの「回復力ある人の特徴」を研究した論文でも重要視されたものに、「起きていることに意味を見出す」というものがあるそうです。
詳しく触れ過ぎると長くなるので紹介にとどめますが、とにかく、意味づけをするというのもまた、ストレスへの対応策の1つになりえるようです。
3-5.散歩×マインドフルネス…?
さて、ここまでは心理学的な対処法等をひたすら列挙し紹介してきましたが、一方で、これらに載っていなくても行って救われていた行為が1つあります。
それが、「神社への参拝」です。
さぁ、ようやく題名に関連する話が出てきました。
そして、私はこれこそが今まで挙げてきた対処法を複合したものなのではないかと、最近考えるようになってきました。
いまからでもとにかく詳しくお話ししたいところですが、文章もだいぶん長くなり時間の方もありませんので、これに関しては次回、まずは題名に関するお話を少ししてから、御話したいと思います。
[1] 一般的にはコミック・マーケット等に、同人ゲーム「東方Project」関連の創作物を出展している同人サークルを指すが、GUTは大学のサークルとしての面が非常に強い。
[2] 東方Project内のゲーム「東方風神録」に登場するキャラクターの氏名。一番最初のボスであり、妹の「秋穣子」のテーマ曲が「稲田姫様に叱られるから」という名前の、非常に店舗が良く明るい曲。
[3] 東方Projectは2次創作が盛んな分野なので、元々の作者が作ったゲームや書籍は「原作」と呼ばれる。
[4] スコア・アタックの略。点数が高いほど強い。国内一桁レベルの人が居たりして怖い。
[5] ゲームの最高難易度「ルナティック」をプレイできる人たちの称号。
HTMLとMarkDown記法(備忘録)
HTMLとMarkDown記法(備忘録)
HTMLの知識
HTMLは下記のMarkDown記法と違い、併用できるのが特徴です。
ただ、編集中には効果が見えなかったり、< >を改行してつけてしまうと空白ができてしまうこと等には注意かも。
HTML特有のもの
- 下線は、半角の<u></u>でくくると作れる。これは Microsoft Word のショートカットやボタンと同じ文字で、後で出てくる斜め文字や太字も一緒。
- 色は、半角の<font color = "色"></font>で囲むと、指定した色に変えられる。
折りたたみボタン
折りたたみボタンは、半角の<details><summary>ここに概要を書く</summary>ここに内容を書く</details>で作れる。なお、このなかでは<h1>などは使えないので、<font size>を使うこと。
<details open>とすると、基本的に開いた状態で記事を書ける。
- 空白の行は、半角の</br>を挿入すれば作れる。
- 上付き文字は、半角の<sup></sup>で作れる。
文字の大きさを指定する時は基本的には半角の<font size = 数字>と</font>で、大きさを変えたい文字をくくる。
サイズの指定は1〜7まであり、サイズ7は見出しのh1と同じ大きさ。
地の文のサイズは3。
(ちなみに小文字は、半角の<small></small>で作れるが、これは本来著作権表示等のための符号なので身内向け以外では使わないほうが良い。)
- 表の作り方に関してはリンクがわかりやすいので参照。
- CSS(見栄えを良くするやつ)の導入方法についてはリンクなどを参照。
ちなみに段落(通常の文章)は本来<p></p>で囲むことで作るが、MarkDownでは必要ない。
ただし、例えば<details>の中とか、HTMLの記法が必要な所だと使ったりする。
MarkDown記法で代用できるもの
- 見出しは半角の<h数></h数>でくくる。5で普通の段落と大きさになる。
- 斜め文字は、半角の<i></i>でくくる。
- 太字は、半角の<b></b>か、<strong></strong>でくくる。
取り消し線は、前後を<del></del>でくくるのが最新の方法。その他に<strike>や<s>を使う方法もある。- 箇条書きは、前後を<ul></ul>でくくって、中の箇条書き一つ一つを<li></li>で括る。
- 他のページへのリンクは、半角の<a href="ページのアドレス">ページ名</a>で作る。
- 注釈専用の欄は、半角の<!--コメント-->で作る。
MarkDownの主な符号
MarkDown特有のもの
※4つのスペースのあとに文章を書くと、注釈専用の欄が出来る。
※ちなみに、これらMarkDown特有の編集方法の中には、下記のHTMLと違い併用できない場合があるなど限界もあるので注意(例:色違いの見出しが作れない)。
- 3つのハイフンを半角で並べると、区切り線になる。
HTMLでも良いもの
斜め文字は、斜めにしたい文字を半角の*でくくる。
太字は、太字にしたい文字を半角の*2つでくくる。
取り消し線は、半角の〜〜で囲む。
見出しは前に # をいくつかつける。ちなみに、シャープを5つ重ねると普通の文と同じサイズ3になる。
- 箇条書きは、前に半角の*かーをつけ、その後ろに半角スペースを置いて文をつける。
他のページへのリンクは、半角の[]で[ページ名]を作り、その後ろに(ページのアドレス.html)をつける。
あゝ、稲田姫様(後編)
※この記事は、サークル「東大幻想郷(以下、GUT)」の、アドベントカレンダー2020内の記事の1つとして書かれたものです。
※東方Projectが分からない知人向けに最初の方に脚注が入っています。ご存じの方は特に脚注はスルーしていただいても多分大丈夫です。
※前編にはコロナ禍等における暗めの話が入ります。もしかしたら、人によっては読み飛ばしていただいた方が良いかもしれません。
初めに
皆さん、こんにちは。
あるいは、初めましての方も多いかもしれません。犬上と申します。
突然ですが、タイトルを見て、皆さんはどのような記事を想像されましたか?
恐らく、東方サークル[1]のアドベントカレンダーだし、タイトルに「稲田姫様」と入っているので、秋姉妹[2]関連で何か書くのか。
あるいはGUTというサークルには、東方原作[3]に関して大量のスコアタ[4]勢やルナシューター[5]が存在するので、原作の風神録関連で何か攻略法とかの話だろうか、と思われた方も多かったのではないかと思われます。
ですが、今回の御話は残念ながら秋姉妹関連では無く、それどころか原作関連でもありません。
どちらかというと、ちっぽけではありますが、人生とか、信仰とかの話になります。
ただ、今週はキャパシティを完全にオーバーして深夜5時とかまで起きていたりした日があるような状態だったので、少し書くのが遅くなってしまいました。
なので本日、19日当日の午後になってもせっせと記事を書いていたのですがようやく気づいたのです。
あれ、これ前置きが長すぎて書き上がらないうえに、23日の枠に前編だけで分割してもタイトル詐欺になりそうじゃない???
ということで、思い切って逆張りをして、いっそ後編から公開してもらうことにしました。
経緯の説明とかはあるとより話が分かりやすくなるとは思うのですが、元から話の接続が悪くて無くても影響が小さそうですし、脚注も入れたので多分大丈夫だと思います。
楽しく読んでいただけましたら、幸いです。
3.5.前編のまとめ
この夏、コロナの猛威が世間を覆う中で、人生において幾度目かの「その時一番の挫折」を迎えて精神的に追い詰められた著者は、やがてその状況から自らの心を救うために精神医学や心理学的な教養を学び始めます。
そして、その中で「ストレス」への対処に良いとされる対処法等を学んでいくのですが、その中には「散歩」や「瞑想」「自らの思いを吐き出すこと」等がありました。そして、著者は自らが取っていた行動の1つである「神社への参拝」が非常に当てはまっているのではないかと考え始めます。
4.稲田姫様って?
突然ですが、そもそも「稲田姫様」について皆さんはどのくらい御存じですか?
繰り返しになりますが、この文章を読んでいらっしゃる方には、東方Projectに関しての知識はそれなりにある方もいらっしゃるとは思います。
なので、そういう神様が存在するということは、「稲田姫様に叱られるから」において認識している方も多いかもしれません。
ですが、「稲田姫様」と言われた時に、その神様が日本神話上でどの位置に置かれどのような神様であるかを即答できる人は、意外と少ないかもしれません。
では、「稲田姫様」とは一体何者なのか?
答えは、「クシナダヒメ」様です。
稲田姫命は、櫛名田比売様の別名になります。ここまでくれば、3分の1くらいの方は思い出されるのではないでしょうか。
一方で、残りの方々には「いや、名前だけ変えられても分からないんだけど…。」という感じかもしれません。しかし、そのような方にも一発でご理解いただけるキーワードがあります。
「ヤマタノオロチ」です。
ヤマタノオロチが世間的にどのくらいの認知度をほこっているかは不明ですが、この日本神話上に歴然たる輝きを放ち、絵本にもなっているほどの8本頭の怪物を御存じでない方はそんなにいらっしゃらないと思われます。
そんなヤマタノオロチを退治した英雄の名前は「須佐之男命」、つまりスサノオであるのですが、話には他にも彼に生贄として差し出すはずだった娘を救われた一家が登場します。
ヤマタノオロチ伝説を思い出していただくため、念のためにストーリーをなぞり直してみましょう。
問題行動の数々から高天原を追い出されてしまったスサノオノミコトが下界に下って途方に暮れるなか、村を探してたどり着いたところで泣いている一家を見つけます。
スサノオノミコトが何故泣いているのかを問うたところ、夫婦は毎年ヤマタノオロチという怪物に娘を生贄として貪り食われており、今年はついに末娘を差し出さなければいけないと言います。
スサノオノミコトはそれを聞いて、自らが娘を妻とするのを条件にヤマタノオロチの退治を引き受けます。そして娘を櫛に変えて自らの頭に刺し、一計を案じて酒を持ってヤマタノオロチの所に行って酒を飲ませます。そして、酔いつぶれたヤマタノオロチの8つの頭を切り落とし、ついに退治したのでした。めでたしめでたし。
ここまでくればもう御わかりでしょう。
そう、この娘こそがクシナダヒメ様です。
8つの頭を切ったら草薙剣が出てきたとか、実はテナヅチとアシナヅチはオオヤマツミノカミの子供で意外と由緒正しい家系だとか色々あるのですが、一番重要なのは、稲田姫様がスサノオノミコトの妻であるということです。
(実はここに関しては微妙に諸説あるのですが。)
つまり。稲田姫様にお目にかかりたい。
そう願ったときは、スサノオノミコトをお祭りしている神社を探せば、実は御祭神の二番目にシレっとお名前があったりします。
そして、犬上の家の近所には何社か神社があるのですが、その中でも特にアクセスが良くて御世話になっている神社が2社あります。
そのうちの片方、いわゆる土地の神様がお祭りされている氏神神社の神様は別の神様なのですが、もう1つの、超難しい言い方をすれば崇敬神社にあたる神社の方が、スサノオノミコトと稲田姫様を祭っているのです。
(更に面倒くさい話をすると、一番初めは氏神様とは一族で祭る神様のことであり、自らが生まれた地を守護して一生をお守りくださる神様は産土神様で、さらに言えば産土神様と現住地を守護されている鎮守様も元々別の概念ではあるのですが、現在においては神社本庁と東京都神社庁のホームページを見ても区別されていません。)
幸いにもスサノオノミコトと稲田姫様をお祭りしている神社は関東一円に多数あるため、住所バレの可能性を考えずに書くことが出来るのがとても嬉しいですね。一方で、鎮守様や他の御祭神様に関しては書くのを避けざるを得ないのが、非常に残念です。
5.稲田姫様にお祈りする
ここまでは稲田姫様の御話をしてきましたが、参拝の話に移りましょう。
神社に参拝するということは、しんどい時にはとても良いものです。
例えばあなたが神社に救いを求めて参拝するとき、家の目の前に神社があるということはほぼ無いでしょう。そう、つまり自然と散歩することが出来ます。
散歩が非常に精神健康に良い趣味であるということは前編[6]で述べた通りです。
また、実際に神社にたどり着けば、御社だけの小さい神社だと難しいですが、神社には大体ある程度の領域が確保されており、自然豊かな状態にとどめ置かれていることも多いです。
そうした緑や鳥の鳴き声等の自然を感じ、どこか清浄な空気を清々しく吸い込むことも出来ます。
適度に管理された自然が健康に良いのは、まぁ、自明ですよね。
そして、参道を歩んで御手水を済ませれば、いよいよ参拝です。
神様は、残念ながら基本的にはお返事をくださいません。いえ、もしかしたらくださっているのかもしれませんが、我々の耳には聞こえません。
ですが、我々から心の中で話しかけることは容易です。そして、かかる費用はニコニコ現金5円玉からでOKです。
心がしんどい時は、誰しも人にすがりたくなるものです。
しかし、しんどすぎるときほど、身近な人にすがるのは気が引けるものです。
残念ながらその身近な人自身を不安にさせてしまう可能性や、心配をかけたくないという気持ち、時間を取って迷惑をかけたくないという気持ち等から、なかなか話せないこともあります。
あるいは、すがるべき近しい人が身近にいないこともあります。
たまたま信頼できる人が身近にいない状況で、話したら陰で何を言われるか分からなそうな相手しか居ない時。
あるいは、引っ越したばかりで電話とかをしないと話せないけど、突然電話をかけて良いほど仲の良い人が居なかったり、予定を組んで電話をかけるほどの気力が無かったりする時もあります。
しかし、神様はいつもそこに居ます。
重たい身体を引きずって、何とか神社にさえ辿り着ければ、いつもそこに居ます。
そして、どのくらい話せばよいか時間を気にすることも、内容を気にする必要もなく話しかけることが出来ます。どんなに守秘義務があろうと、例え国家機密であろうと内心で神様にペラペラと話す分には、声に間違えて出してしまわない限りは問題にはなりません。
そして、自身の内心をそうやって整理すること自体が落ち着くことではありますが、加えて幾らすがろうとも問題ありません。
神様とは、むしろ縋られるべき方々なのですから。
今年は随分と神様に助けられました。
辛い現状から、将来の不安。自分ではもはや何が最適解かも分からなくなって久しく、どうすればよいか分からないことも全部神様に吐き出して、嘆いて、縋りつきました。
人間は我が侭なもので、最終的に首の皮一枚つながった時も、最初はもはやしんどすぎて喜べず、「神様の良い進路をお選びください」と思考放棄していたくせに、結果が出てみたら途端に「なんでこっちを選んだのですか。もうどうすればよいか分かりません」と神様を責め立てる始末です。
ですが、神様は逃げません。
どんなに理不尽なことを申し上げようと、破壊活動のような実力行使に出ない限り、人間と違って離れて行ってしまったり、問題になってしまうこともありません。
何なら、特段天罰が下ったりするようなこともありませんでした。御心がとても深いのですね。落ち着いたころに謝りに行きました。
余談ですが、だからこそ思います。
「稲田姫様に叱られるから」っていうけど、本当に叱られるんだろうか。
もしかすると、「叱られる」というのは案外思い込みだったり、あるいは「叱咤激励」の「叱」なのかもしれませんね。
余談はさておき、自分の思いを吐き出す、というのも良いことです。
残念ながら本来的なコミュニケーションの観点からの効果は得られないかもしれませんが、それでも抑えていたものを放出するという観点や、あるいは外部化[7]の観点からは効果があるかもしれません。
そして、「マインドフルネス」の観点からも、きっと良いものでしょう。
前編では「マインドフルネス」を、禅宗の「正念」の概念から派生したエビデンスを伴う最先端の心理療法の1つであり、「今ここでの経験」に「判断等は加えず」「注意を能動的に向けること」であると紹介しました。
「念」という漢字自体が「今」と「心」の組み合わせであり、まさにマインドフルネスそのものの概念な訳ですが、「祈念」とか「念仏」という言葉があるように、「祈る」という行為もまさに「念ずる」ことに他なりません。
「今ここで考えていることを」「考えている内容自体へ判断を加えず」「それを祈ることだけに専念している」。
まさに、マインドフルネス的な行為に他ならないと、私は思います。
また、御守というものも非常に良いものです。
幾ら日参していたとはいえ、当然時間の無い日も幾らでもあれば、しんどすぎて最早気力が湧いてこない日もあるものです。
そんな時、忘れかけていた御守を出してきて、それに向かって無心に祈ると少し救われたような気分になったのを覚えています。
守られている、という感覚も優しいものがあり、これからは何か大切な時は御守を持っておこうと思わされる程度には安らぐものがありました。場所も取らないことから、ライナスの毛布には最適かもしれません。
ちなみに御守は、子供のころから持っている思い入れのあるものだとかを無理に返す必要は無いとされているものの、厳密には一年に一度返納して交換していただくものです。
そのため、後日時間のある時に、御返納して改めていただいてくることとなりました。
また、私自身は七五三の時の御守りや鎮守様の御守り、崇敬神社の御守りなど幾つかお守りを持っていますが、一方で幾つも持つと神様が喧嘩して良くないという俗信が存在します。
しかし、神社本庁のホームページ等によってこれは否定されています。
そのため、もしも謙虚な心で御守りをいくつか持つのならば、それは問題ありません。
あなたも神社への参拝を、日常の習慣として始めてみませんか?
6.神社こぼれ話
そんな感じで何とか隙間時間を見繕ったりしながら可能な限り神社へ参拝してきたわけですが、そうしていると不思議なことがあったりします。
例えば、ある日いつも通りスサノオノミコトと稲田姫様の神社に参拝してお祈りしてから帰ろうとすると、猫がお散歩していました。思わず童心に帰ってついて行くと、神社の見たことも無いところに入っていきます。よく見ると、参道が続いていたのです。
しかし、非常にわかりづらく一見来るもの拒むような場所であり、そもそも立ち入ってよい場所かもわからず諦めていたら、一週間後くらいに参拝客のお婆さんがその領域に入ってゆくでは無いですか。
もしかして、と思ってお婆さんが出てきた後にそっと入ってみたら、なんと小さく隔離されたような別世界がそこにはありました。まるで、ゲームの隠し部屋にでも紛れ込んだような、どことなく狐につままれた気分です。
意味もなく「ああ、神様に認められたんだな」と思った記憶があります。
実際、参拝客の中には先に気づいておらず手前の神社だけを拝んで帰る人も多く、地元の人っぽい人ですら知らずに帰っているのを見かけます。何とも驚いたものです。
稲田姫様は、案外悪戯な御方なのかもしれません。いえ、悪戯な御方という意味では、主神様のスサノオ様なのかもしれませんが。
また、不思議なことに鎮守様の方にも隠しステージが存在します。
こちらも神社の中にある他所の神社の分社までは分かりやすいのですが、更に裏手にもう一つ御社があることは全然知られていません。ある日、突然気が付きました。
よくよく見ればきちんと裏手への道に「御参道」と、入ってよいことを示す石が立っているのですが、読みづらいので注意してみないと気が付きません。
最初は道が細いことから、多分普通に神社の人が拝殿裏の本殿を管理するために存在する道かと思っていましたが、実は違いました。
やっぱり、小さな別世界がそこにはあります。
更に不思議な話を続けると、ある日そちらの分社を参拝していた時に、なんとなく「帰らないで」と言われた気がしたことがありました。
自分もどうかしているなぁ、と思いつつ、急がない日だったのでもう一度引き返して参拝して今度こそ帰ろうとすると、ふと後ろを向いたときに小さな子供が隣とを隔てる弊の隙間から顔を出しているのを見つけました。幼稚園児位の子です。
興味津々で男の子は「どうやってそこに行くの?」と尋ねてきました。
しかし、道が悪いので誤魔化して帰ろうとすると、なんと男の子は塀の隙間を潜り抜け、内側に入ってこようとしています。しかし、塀と地面の間は男の子の身長よりも高さがあり、下の状態は芳しくありません。
これを止めるために引き留められたのだな、と思いました。
自分が居なければ、男の子は誰にも尋ねることなく、最初から無理やり入ってきていたに違いありません。怪我が無ければ良いのですが、もしかしたら、下が危ないので怪我をしていた可能性も否定できません。
結局は煩悩して危険な入り方をされるよりはと彼の御友達もろとも表側の参道から案内したうえで、指切りげんまんで親に話すことや大人と一緒に来るように教え込みました。
また、神様なりの援護だったのか、坊やが突然「風邪は天罰から始まった」とコロナ時代に意味深なとてもスピリチュアルな主張をしているのにかこつけて、「神様の前で指切りげんまんしたのを破ったら天罰が下るね」と言ったら2人そろって顔を引きつらせていたので大丈夫だとは思うのですが、念のためにそういうことがあったことを宮司さんにも報告して終了となりました。
その後何かあったという風聞も無いので、きっと正解を引き当てたのでしょう。
ちなみに余談ですが、別れ際に子供たちに「バイバイ、ギラティナさん」と言われたのが未だに面白いと思っています。ギラティナとはポケモンの、鏡の中の反転世界の主ですから、彼らから見てもやはりあそこは、一種の別世界だったということなのかもしれません。
少し科学とはかけ離れた感じになってしまいましたが、そんな感じで日常に新たな発見があったり、神社へ行くと面白いことがあります。
そして、特に稲田姫様がいらっしゃる神社なら、悪戯なスサノオ様が貴方に素敵な、特別な体験を何か用意しているかもしれません。
だから――、是非皆さんにも神社へ足を運んでもらいたいと思っています。
さぁ、現実の中の神秘の世界へ飛び込んでみませんか?
[1] 一般的にはコミック・マーケット等に、同人ゲーム「東方Project」関連の創作物を出展している同人サークルを指すが、GUTは大学のサークルとしての面が非常に強い。
[2] 東方Project内のゲーム「東方風神録」に登場するキャラクターの氏名。一番最初のボスであり、妹の「秋穣子」のテーマ曲が「稲田姫様に叱られるから」という名前の、非常に店舗が良く明るい曲。
[3] 東方Projectは2次創作が盛んな分野なので、元々の作者が作ったゲームや書籍は「原作」と呼ばれる。
[4] スコア・アタックの略。点数が高いほど強い。国内一桁レベルの人が居たりして怖い。
[5] ゲームの最高難易度「ルナティック」をプレイできる人たちの称号。
[6] ウォーキングという行為自体が抑うつ症状には良いということや、あるいは途中で他人の家の前なり何なりに植わっていたりする草花を見ることが可能であり、昼間であれば太陽光を浴びられること、余計な情報がシャットアウトされることなどによります。
[7] 前編の、不安でたまらないときは書きだすと外部化されて良いよという話から。