Inugami's blog

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犬上です。極まれに何か書いたりします。

生き残れ! 東大大学院経済学研究科 地獄の修士1年前期

 

※この記事は、サークル「東大幻想郷(以下、GUT)」の、アドベントカレンダー2021内の記事の1つとして書かれたものです。

 

 

 

はじめに

皆さんこんにちは。

御存じの方もそうでない方も、犬上です。

現在、東京大学大学院経済学研究科で、修士課程1年をしています。

 

思えば大学に入学してから5年。

文系なので、世の中一般的にはもう卒業して働いている頃ですが、気づいたら大学院におりました。

 

まぁ、人生の転機とは得てして思わぬところに転がっている物でして、恐らく年長の読者の方はよくご存じでしょうし、僕より若い読者の方もいつか経験することでしょう。

 

なので、こうして年甲斐も無く駄文を寄せております。

もう今のGUTの新入生とかの顔も知らないほど老人になってるとか、気のせいだよね。

 

さて、口上が長くても飽きると思うので本題に移ると、とにかく文系大学院生というのは、世の中的には誤解されているような気がしてなりません。

 

曰く、猫よりヒマとか。

曰く、何か学問に耽溺しているとか。

曰く、「それ君の趣味だよね?」とか。

 

分野等に関わらず、なんだか有閑ニートさながらなことを言われることも珍しくありません。*1

 

理系の大学院生は、割とどんな分野でも「まぁ理系なんだし大学院位行ってもおかしくないよね」という雰囲気があるもの*2ですし、何より「理系の院生って社畜より忙しいんでしょ」みたいな感じがありますが、やっぱり文系に関しては「ニートかな?」みたいな扱いを受けることも多いです。

 

しかし、実際に進学を考えた際に初めて気づいたんですが、具体的な東大経済学研究科の実態に関する情報はネット上に兎に角少ないのです。

とにかく大学院に来る人が少ないので、数人の先輩が残した足跡くらいしか追えません。

 

なので、せっかくの機会を借りて大学院生活とはどのようなものか、まだ見ぬ後輩とか知人とかに知ってもらおうというのが、今回の趣旨でございます。

 

 

第1章 春休みから始まる補習

さて、大学院にはそもそも入る前から「やれ研究計画書が」「やれ試験勉強が」と、色々存在するわけですが、その辺についての詳細は割愛します。

 

ただ、研究計画書に関して言えるのは、研究計画書って、理系みたいに研究室配属で先輩が研究のやり方教えてくれるとか、外部の大学院に出すので不正になり得ず先生が研究計画立案を手伝ってくれるとか、卒論で大内兵衛*3をとるためにみっちり扱かれたみたいな状況なら兎も角、そうでない場合はどう書けば良いかも分からないところから始まるので、早め*4から頑張りましょう。

 

あと、試験に関して言えるのは、僕の人生有数に大変だった面接に、某社のインターン選考での「チキチキ! 真顔の社員*5さん10名 vs ボク1人 ~楽しい楽しい大企業面接~」というのがあるのですが*6院試の口述試験は、場合によってはそれ以上に怖いです。

 

何を聞かれるかとかの詳細は、残念ながら受験時の制約の関係上言えませんが、まぁ他の先輩の記事でも見てください。

内部でそのまま大学院に上がるのが当然な分野の理系フレンズの口述試験の話なんて、当てになりません

 

話を元に戻すと、上記のような死闘(?)を潜り抜け何とか合格になると、内部生は単位を持ち上げよう*7と追加単位を回収したり卒論を書く日々に戻り、卒業要件を満たせば当然大学最後の春休みがやってくるのですが。

 

経済学系の大学院生の春休みは皆よりちょっと短いです。

何故なら、3月末に4日もかけて8時限分、通称マスキャン*8と呼ばれる数学の補講が開講されるから。

それも、英語で。

 

そう、英語でです。

それも、文系最大の敵である、数学を。

 

当然、英語はTOEFL*9*10を受験時に出すので最低限みんな分かってるんですが、数学用語なんて普通やらないので、その時点で「なんだこれは?」ってなります。

 

しかも、やる内容もえげつないです。

理系だったら「デカルト積」「ユークリッド距離」「有界集合」「コーシー列の収束」「対応*11」「不動点定理」とか、「行列の特性方程式固有値」「行列の微積」「ヘシアン」「収縮写像定理」とかは、大学1年とか2年で普通にやるんだと思うんですが*12、経済系とはいえ学部生がやるのはせいぜい「全微分偏微分」「テイラー展開」「行列式」「線型方程式」「非負定値行列」くらいなのであって、さっき挙げたようなのは出てきません。

 

まぁ、ということで、予習復習に時間を取られて8時限分の時間では済まないです。

そもそも、講師は教官ではなく先輩方なので、割と僕らに近い感覚かつ優しさの下で行われるんですが、それにしたってわからない。

 

しかし、これを理解しないと待つのは死です。

これらの知識は全て、大学院の必修であるコアコース*13で使われるのですから。

 

 

第2章 あ、野生の75時間かかるコースワークが飛び出してきた!

上記の楽しい補習が終わると、次に始まるのは新生活。

さぁ、心躍る憧れの大学院生活の開始です。

 

授業は週たった4科目5時限。

どんな趣味に時間を使おっかな…。

 

はい。嘘です。

いや、実を言うと嘘じゃないんです。というのも、実際に授業時間はたった4科目5時限で、そこは嘘じゃないからです。

 

しかし、これを学部時代の額面と同じく受け取ってはいけません。

そもそも、学部時代の授業って大半は、受けてればお終いだし、聞けば理解できるし、たまに課題がめんどくさくても単位なんとかなるし、何なら文系はサボってても試験勉強頑張れば何とかなったりしますよね。

 

大学院は、そうではないのです…。

まず、見えない時間に「TAセッション」があります。

 

TAとはみんな御存じTeaching Assistant、つまり大学の先輩方が授業の補助教員としてバイトで入っている人たちです。

同じ大学の方なら、だいたいどこかで見たこともあるのではないでしょうか。

 

そんな、学部時代は何か授業に居たりして雑用してるな…って程度の彼らが、大学院の授業になるとTAセッションという名前で、授業2回に対して1回くらいのペースで補講を行います。

 

え、学部でも授業によっては開催してたじゃないかって?

その通りですね。しかし、君はその授業、出てましたか…?

 

少なくとも、僕の周りの人は出てませんでした。

東大経済学部の学部のTAセッションは、あくまで出なくても単位でも何でもとれる、いわば本当に真面目な一部の学生や、その科目が好きな人とか向けの印象があります。

 

しかし、大学院では違うのです。

 

そもそも、先生が何を言ってるか分からない場合があります。

 

あるいは、先生が「ここは飛ばすからTAにでも習ってね」と、さらっと大事なことを飛ばしたりします。

授業で使う数学の概念*14とか、授業で使う動学問題の解き方*15とか、コースワークに必須のプログラミング*16の使い方とか。

 

もちろん、知識があるなら出なくても良い*17のですが、たいていの場合、知識が足りません。

なので、実質週7コマまで授業数が増えます。

 

さらに、7コマと言っても学部時代と違って聞いて終わりとはいきません。

聞いて理解できなければ、次回までに予習復習で何とか最低限でも理解を形成しないと、次の授業についていけなくなります。

 

あ、言い忘れてたけど、東大経研ではコア科目やそれに準ずる重要な科目は全部英語開講*18なので、もしかするとその辺も理解不足に拍車をかけてたかもしれません。

 

なので、授業によっては額面の2倍や3倍の時間がかかります。

 

しかも、追い打ちをかけるのが、コースワークです。

さっきから出てるこの単語。一体何と思われてるかもしれません。

 

コースワークとは、コア科目で出る宿題のことです。

国際的にはどうか知りませんが、基本的に東大では山ほど出ます。

 

そして、これが分からないし、終わらない。

 

そもそも、必ずしも独りで挑んでいるわけでは無くて、授業によっては助け合って進めるためにグループを組むことが推奨*19されます。

また、独りでやらなくてはいけない授業*20でも、一部の例外*21を除けば相談は可です。

 

だけど、終わらない。

 

授業によって違うものの、大体2回から4回の授業に対して1回出る程度が普通なのですが、1授業あたり中央値*22で10時間*23から30時間*24くらいかかります。*25

 

つまり、どういうことかというと、全休を丸1日か、普通の日の授業以外の時間を2日潰さなきゃいけない宿題が週に1個か2個*26と、1週間ほど死に物狂いにならないといけない課題が、3週間に1回くらい出ます。

 

そして、宿題が授業によっては成績の40%のウェイトを占めたり*27します。

 

ちなみに章タイトルの75時間というのは、ちょうどゴールデンウィーク期間中にやったマクロ経済学の第1回の課題です。

 

さっきから言ってるこの75時間とか30時間というのは、丁度当時に何とか無駄な時間を減らして休息を増やそうと生活記録をとっていたものから見えた結果なので、体感ではなく非常に正確な時間であることを保証します。

 

いや、先生は分かりやすく授業してくれてたけど、なんかコースワークに必要な発展的な知識はレジュメとか授業内容に入って無かったりしたんですよね*28

なので、課題のために副読本で時系列分析の本を1冊に、あと自分が専攻する予定じゃない分野の論文を英語で数本読むことになりました。

 

流石に皆、初めてで勝手も分からない状態にそれを食らって討ち死にしたので、神様のようなTAの先輩方が御慈悲で期限を伸ばしてくれたんですが、まあそれでも終わらないと思いましたよね。

当然、最後徹夜だったし。

 

え、ゴールデンウィーク

全部消し飛んだよ。ゴールデンワークの間違いでは?

 

あと、完成した提出物は、慣れないLaTEXで清書して最終的に提出しなきゃいけなかった*29ので、それが拍車をかけてた感はありますね。

印刷の時間とか合間の5分休憩とか関連した雑用も併せれば、80時間を超えたのは内緒です。

 

さて、話を元に戻すと。

たしかに、週7コマしか授業自体が無いのは、一見暇そうです。

しかし、コースワークに圧殺される限り、その生活には余裕などとてもありません。

 

特に、理系的には学部時代も、専門課程から選考によっては週20コマかつ実験は延長多数とかなので「だから何?」となるかもしれませんが、文系は「週10から15コマ」程度で暮らしている*30ので、この落差は非常に激しいです。

 

ある敬愛する先輩の言葉を借りるなら、「永遠に終わらない強制ランニングマシーンの上で走り続ける」のが前期です。

 

なので、結局は、一握りの「あ~、こういうやつが将来は世界の一流大学*31の教授になるんだろうな」って人を除いて*32、週末や休日なんてものは無くなります。

 

ある日は、研究室から命からがら終電で帰った友人と、深夜4時に「ここどうなってるんだろうねー」と言いながら、答えが出ない問題に気が狂ったように笑い

 

ある月は、半月ぶりに何とか作った半日の休みが、プライベートの用事を済ませるだけでつぶれて呆然とし。

 

ある月は、週末に3時間程度だけ、息抜きでしていた某ゲームの時間すら1か月間とれず*33、休日が無くリフレッシュが難しい分だけメンタルを守るために削らないようにしていた睡眠時間も、平均5時間睡眠まで削り。

 

ある月は、気まぐれで月の残業相当時間を計算してみたら100時間を余裕で超えてたり

 

大学院前期の生活は、そんなものです。*34

 

 

第3章 追い打ちをかける就職前線

以上で今回の本題は大体終わりなのですが、とはいえ、少し情報が不足しています。

というのも、上記はポンコツ大学院生である私の実体験ですが、生活が厳しかった理由には、実は就活の時間も含まれているからです。

 

最近は、就活がインターンで早期化しています。

なので当然、博士課程を目指す人以外は、特に文系修士には研究室の推薦とかも無いので、普通に就活するためにもインターンを探さなければいけないのですが。

 

大学3年生以上の人は知ってる話、インターンとか出すのって結構大変なんですよね。

ボクも削りに削って週5時間くらいしか平均で使ってなかったんですが、しかしまぁ、エントリーシートに面接にと、慣れないものが沢山襲い掛かってきます。

 

とはいえ世の理なので、凡人は社会に適合しようと足掻くしかないわけですが。

コースワークで削られた休み時間はガリガリと音を立てて削られ。

 

結局、経研修士は出願で5~7社くらいしか出せないのが普通*35です。

 

一方、博士課程に行きたい人は暇かと言えば、そうではありません。

もしも、先のコースワークが博士課程進学要件を満たさなければ、容赦なく修士で放り出されます

 

具体的には、ミクロ経済学マクロ経済学で優(A)、計量経済学で良(B)が求められます。

そして、これをとるのはかなり難しい。

 

そもそも、東大経研はコア科目の授業内容自体が難しいらしくて、ただでさえ修士で修了して出ていくつもりの学生は、修了要件になら条件付きで代替できる、内容が易しい*36公共政策大学院*37の授業に逃げがちであり、公共政策大学院が激怒して人数制限かけたという噂*38があるくらいなのですが、それで優をとるというのは相当です。

 

(実際、普段は経済学研究科経済専攻経済学コースの学生って50人位居るし、大学院進学予定の学部生の受講者もいるので、例えばミクロ経済学とかだと授業受けてる人はZoom上に80人位居て履修登録者も72人居たんですが、計量経済学2とかは履修登録者が57人で試験には40人位しかいませんでした。)

 

一応救済措置として追試等はあるのですが、皆が優を取り直せる訳でもなく。

追試*39の時の某教授の言葉が忘れられません。

 

"Don't worry. If you will not be able to satisfy the requirements, Todai is not the only graduate school of economics. "(うろ覚え)

 

慰めの言葉という意味では優しさも感じますが、何人か追い出すことが暗黙の前提として存在する言葉だというのを踏まえると、厳しい言葉でもあります。

 

 

第4章 具体的な個々の授業とかの話

以上で言いたかった話はおしまいですが、もしも大学院に進学する予定の人とかが居たり、「結局具体的に何してたの」って思ってる人が居たらと思って用意しました。

 

なので、この章は、ある意味蛇足で、大学院に進学する予定とかのある人以外にはつまらないかもしれません。

 

興味のない方は、最後の「終わりに」へお進みください。

 

第1節 経済学のための数学

通称「経ため」、または「マスエコ」*40

唯一必修外ですが、未修者はミクロ経済学のために受けないとミクロが理解できない、いわば準必修的なポジションの授業です。

 

担当する先生によって中身が変わってしまうという噂があるものの、現状のカリキュラムでは最初の方は春のマスキャンでやった内容の焼き直しなので生きてられます。

ただ、4回目くらいから、何か気づいたら良く分かんなくなってたりします。

 

主にやってるのは解析学で解を求めるための定理とかであり、例えば集合論的な部分なら"Nested cells theorem"*41 とか、ハイネ・ボレルの被覆定理ワイエルシュトラスの定理*42

数列や連続性に関しては、上方ヘミ連続性*43とその収束とか。

不動点定理では、ブラウワーやタルスキ、角谷の不動点定理にスピナーの補題

距離空間位相幾何学の一部に、格子*44とか…。

 

このうち、マスキャンレベルの内容やハイネ・ボレルの被覆定理は、経研生御用達の神谷・浦井「経済学のための数学入門」に出てくるのですが、まぁ他は出て来ず…。

下手したら日本語どころか英語でググっても出て来ないので、強く生きてください。

 

一応、諦めて追加でSundaram*45あたりを購入して、わかんないところをつまみ食いのように読むと、多少は救われると思います。

古いから、やっぱり載ってない内容も沢山あるけど

 

あと、ブラウワーの不動点定理は、実は、ゲーム理論をする人が大体は読んでるギボンズ「経済学のためのゲーム理論入門」にも少し載ってます。

 

あとは、最初の方の理系の一般教養科目と共通的な内容の部分に関しては、ググれば他大学の講義ノートが理系向けだけど出てきたりして*46理解の助けになることもあるので、その辺も読んでみると救われた気がすると思います。

 

第2節 ミクロ経済学

上記の経ための内容を踏まえたうえで、前期は古典的な価格理論、つまり消費者理論と生産者理論、部分均衡分析に厚生経済あたりをします。

ゲーム理論は後期です。内容的には学部と被ってますね。

 

でも、重要なのは、最初から数学的な証明問題のオンパレードだということです。

 

だいたい学部までの経済学では、いわゆる微積とかラグランジュ乗数法を用いて均衡点とかを導いてれば済みましたが、大学院のミクロ経済学は、数学の証明問題そのものになり、コースワークでも永遠に証明を行うことになります。

 

自分も含め、ここの違いに戸惑う学生は多い気がします。

 

また、中身も強烈で、最初から論理と集合の成果物である「社会選択理論」などで、いわゆる「選好顕示」に関する証明が行われたりします。

 

この辺に関しては、割とググると他大学院の資料が日本語で転がっていたりもするので、自習が追いつかなくて困ったときに使ったりしてました*47

 

あと、学部では「予算線と無差別曲線の接点だから~」とか言ってたやつも、「予算集合と無差別曲線の関係」に代わり、集合論になります

 

もちろん、経済学部生が大好きな「ナッシュ均衡*48」とか「エッジワースボックスとコア」も、学部みたいな図によるお絵かき説明は許されず、不動点定理や収束に関する理論を使いながら、数学的に証明されたり求められたりします。

 

教科書は名著MWG「ミクロ経済学*49ですが、これは1000ページを超える、いわば「鈍器」でございまして、発狂した経研生による殺人事件の凶器の1つとしても有名(大嘘)です。

 

しかし、例え価格理論の専門家になる気が無ければ通読に向かない*50とはいえ、読まないと先生が「これは簡単だから自分で証明してね」とか言い出した部分の証明が永遠に思いつかなかった時に死ぬので、だいたいは皆つまみ食い*51とはいえ読むことになります。

 

あと、経ためもそうでしたが、担当がM先生ならレジュメのCheck!は本当にチェックしておかないと、もれなく試験で死にます。

 

第3節 マクロ経済学

打って変わって、マクロ経済学では、あんまり先のようなのは出てきません。

せいぜい、静学均衡を求めてたのが動学均衡を解くようになるだけで、案外紙の上では使ってる定理とか以外、やってることも変わらないです。

 

なので、難しいけど取っ付きはしやすいかもしれません。

 

例えば、ソローモデルの拡張系みたいなのをラグランジュ乗数法で解いていた状態からハミルトニアン*52で解くようになります。

あとは、ラムゼイ・キャス・クーパーモデルとか、ダイアモンドモデルとか、宇沢*53・ルーカスモデルとか。

トービンのQ理論と、林*54のQ実証も出てきます。

 

もちろん、経済学は「古典派→ケインズ派新古典派シカゴ学派→新しい古典派→新新しい古典派総合(うろ覚え)」と発展してきてるので、リアルビジネスサイクル(RBC)理論とか、その発展のDSGEモデルとかもやります。

 

教科書は基本的にローマー「上級マクロ経済学」ですが、たまに別の洋書*55もモデルへの理解を深めるために読むことになります。

あと、コースワークが分かんなくてBaglianoを読んだりしたこともあります。

とはいえ、基本的にはローマーで済みます。神。

 

というか、個人的に疑問なんですけど、よく「大学院レベルのマクロ経済学へのつなぎに二神・堀『マクロ経済学*56を読もう」みたいな話があるじゃないですか。

あれって実は、二神先生の別著作「動学マクロ経済学 成長発展の理論」の間違いだったりしませんかね?

 

というのも、学部の取りこぼしを復習するには確かに「マクロ経済学」は大変便利なので、大学院受験自体にも恐らく役に立つのですが、実際の大学院の副読本に役立つのは「動学マクロ経済学」だから*57です。

出たのも「動学マクロ経済学」の方が先だし。

 

話を戻すと、ただ、ここまでは気安い面を書いてきたのですが、重大な問題が一つありまして。

というのも、大学院のマクロでは、コースワークで「時系列分析」と「シミュレーション」を永遠にやることになるからです。

 

そもそも、マクロ系のゼミに居たなら兎に角、大体の応用経済系のゼミとかでは、時系列分析はしません。

基本的に計量経済学で習うのは、学部大学院問わず、ミクロデータ分析の技術だからです。

 

ですが、大学院ではHPフィルター*58に、ARモデル*59付近から始まり、定常過程ADF検定*60ランダムウォーク、確率トレンド、グレンジャー因果性に、VARモデル*61インパルス応答関数*62

あとは理論から導かれる分布を使って状態空間モデルに、ベイズ統計的な事後確率による事前分布の更新等々、とにかく時系列分析をすることになります。

 

当然、プログラミングすることになります。

Pythonとか、Pythonとか、Rとか、Pythonとか、Matlabとか。

 

うーん。

RでなくPythonなのは何故なのでしょう。

経済系は基本的にRを使うことが多いと思ってたのですが。

 

まぁ多分、時系列分析は理系も同じことをかなりやるので、Pythonのライブラリが充実してるんだと思います。

なので、TAセッションでTAが触りを教えてくれるのも、コースワークの答えに書いてあるのも、基本的にはPythonのコードです。

 

ただ、例えばBeveridge・Nelson分解*63とかはPythonにライブラリが無く、日本語だとググっても昔の某H教授の論文に名前くらいしか出て来ないし、レジュメではARでの説明しか無くて足りなかったので、英語の論文を2~3本読んで自分で実装することになりました。

 

あと、ライブラリがあっても、いわゆる「クラス」の中身を編集しなきゃいけない時に、そんなものは情報科ならとにかく、経済学生にとっては完全に守備範囲外なのと、最終的に学者になりたいなら自活できるようになれって意味も多分込めて誰も教えてくれなかったので、涙目になりながら調べて実装してました。

 

あと、シミュレーションに関してはMatlab上でやることになります。

使うのはDynareなので、Octaveでもいいかと思って使ってたら最後動かなくて泣いたので、最初からMatlabでやるのがオススメです。

 

ところで、オススメという意味では、Pythonに関しては、例えば学内の松尾研が出してる「東京大学のデータサイエンティスト育成講座」とかが助けてくれると思います。

 

一般向けの書物なので数式などの理論面はほとんど書いてない*64ですが、逆に、理論が分かっている人や理論の前にまず触ってみたい人向けの、Pythonのコードの書き方の本だと思えば非常に取っつきやすいです。

なので、学部生のうちに機械学習以外のパートをやっておくと、多分幸せになれると思います。

 

もちろん、機械学習は最新のデータサイエンスとして社会に直結する分野であり、そして、直近において経済学研究への応用も拡大し始めている分野です。

更には、かつ計量経済学のノンパラメトリック分析*65を理解するには機械学習的な知識がある方が楽なので、個人的には機械学習パートもやれば、より幸せになれると思いますが、個人次第かなとも思います。

 

時系列分析に話を移すと、こちらに関しては、沖本「経済・ファイナンスのための計量時系列分析」*66が役に立ちます。

 

マクロ時系列分析の理論に関して詳細に書いてある大変な名著で、何を隠そう、75時間かかる課題の時に必死に読んでいたのはこれです。

 

しかし、適度に薄くて非常に役には立つのですが、春休みとかに予習用に読もうにも、これを読める人はそもそも行列とかが完璧に理解できてる人だと思うので、まずは西山・新谷・川口・奥井「NLAS計量経済学」がオススメです。

 

NLASは2019年に出た最新の計量経済学の教科書で、日本語で実に700ページもある鈍器であり学部生には恐怖から敬遠されてる気がしますが、付録まで含めて詳細で非常に丁寧であり、4000円と少し値段も高いけど、何にも分からない時に辞書的に引くと幸せになれる教科書です。

 

なにより、実証研究で鳴らす先生方が書いているので応用例も豊富であり、かつマクロ部分だけなら150ページくらいなので、分厚さ以外は神です。

独りで通読しようと思わなければ、非常におススメです。

 

第4節 計量経済学

計量経済学もまた、ミクロ経済学ほどの取っつきづらさは無いのではないかという気がします。

 

というのも、最初の方に関しては当然ですが学部と被る内容も多く、また、それ以外に関してはより上級の、発展的な推定方法や、違う仮定に基づく推計方法を追加で学んでゆくことが基本になるからです。

 

とはいえ、私は学部で正課の授業をとっておらず*67、ゼミでの田中「計量経済学の第一歩」*68の輪読や、山本「実証分析のための計量経済学 正しい手法と結果の読み方」*69での独学によって学習したので、どのレベルまで学部でやっていたのかイマイチ知らないのですが、当時や現在入手している手元の学部向け授業の資料を見る限り、レベル感的にはあまり第一歩と変わらなさそうです。

 

ただ、内容の難しさという意味では、段違いに大学院では難しくなる気もします

 

というのも、第一歩や学部レベルの教科書を見ていれば分かるのですが、基本的には統計量の性質等に関しては、言葉で説明されることも多いです。

 

また、浅野・中村「計量経済学」こそ、学部生が対象の教科書としては珍しく、徹頭徹尾行列が出てきます*70が、学部レベルの教科書や授業だと、第一歩やNLSAの付録以外の部分のように、行列が出て来ないケースが基本です。

 

内容自体も、非線形回帰に入らず、線形回帰で終わってしまうケースが見受けられます。

 

しかし、大学院で求められるのは、例えば大数の法則中心極限定理から始まり、行列を用いて、モーメント条件などを利用し、どのようにパラメータの推定量が導かれ、どのような数式の形をしており、どのような場合にバイアス等がかかった誤った値を数学的にどの程度出してしまい、どの回帰法を使うのが統計的検定のために一番「効率的」でよろしいか、などをなぞり、抑えていくことです。

 

そしてコースワークでは、現場で学者が自ら使うことを想定して、推計の際に使うべき関数形などを計算して求め、授業で行った定理や、証明が飛ばされた話、あるいは「こういう場合には本当にこの統計解析法は使えるのか」というを疑念を、ワークに沿って証明しつづけることになります。

あるいは、時には実際にRなどで疑似データを発生させてシミュレーションすることもあります。

 

また、新しい手法で学ぶ内容としては、情報をフル活用したい一方で難しい場合に居て、いかに情報を損なわずに統計解析を行うか。

あるいは、どのような仮定が行われているのか改めて知り非線形回帰やノンパラメトリックな回帰を如何に行ってパラメーターを推計するのか

 

そういった難しさが付きまとうことになります。

 

具体的には、計量経済学1は、学部からの延長です。

 

主に最初3回くらいで、最小2乗法*71、射影*72、単回帰、重回帰、FWL定理、欠落変数バイアス、漸近理論など、学部なら1単位以上貰えそうな部分を、行列で詳細な性質等を見ながら爆速で済ませます。

 

その後は、F検定やワルド検定*73一般化最小2乗法*74に、操作変数法*752段階最小2乗法*76一般化モーメント法*77非線形一般化モーメント法*78、最尤法*79などを行います。

 

それぞれ、分散が理論上どのくらいに収束し、どのように証明されるのか、場合によってはどのような重みづけ等が最適かなど、内容そのものは学部でも教わりそうなものを多く含むものの、高度な中身を見ていくことになります。

 

本来文系として生きていれば見ることが無い、クロネッカー積やナブラ演算子などが資料の上を踊っていることを除けば、まだ取っつきやすいです。

 

一方、計量経済学2になると、中身は知らない範囲に進み始めます。

最初の方こそパネルデータの固定効果モデルや、非線形回帰のプロビット回帰サンプルセレクションモデル、持続時間モデル、ローゼンバーグとルービンの傾向スコア推定など、教科書によっては概要や分析法を含む範囲を進みますが、この辺で分位点回帰極値定量2段階極値推定ニュートン・ラプソン再帰法、ブーストラップ法など、人によっては知らないものが出てきて怪しくなってきます。

 

その後はこれまでのパラメーターを設定していた推定を超え、ノンパラメトリック推定*80セミパラメトリック推定の領域に入り始めます。

ここが非常に難しいです。

 

というのも、カーネル回帰も知らない経済学生が、新出の「バンド幅」の概念などを多量に含み、かつ今までよりもはるかに複雑になった漸近性質の導出を理解するのは、凄まじい苦労だからです。

皆大好きバイアス分散分析とかも出てきます。

 

回帰木と決定木など、機械学習的に色々見たことがある人にとってはかえってこの辺の方が楽なような気もします。

 

しかし、これらの機械学習的な統計学は予測問題を解くことを目的にすることが多く、因果推論的な識別問題を目的にパラメトリック推定を学んできた経済学生は、基本的に知識が無いので苦しむことになります。

 

とはいえ、逃げることは出来ません。

非常に強力な実証手法の1つとして、学部でも応用経済系の授業などに登場する回帰不連続デザインとかは、この辺の延長線にあるので。

 

局所線形回帰モデル*81や、グローバル線形回帰モデルなどがトピックになります。

 

そしてセミパラに至ると、部分線形回帰シングルインデックスモデルセミパラメトリック一般化モーメント法などに至ります。

 

こんなもんで優なんか取れるか!?!?!?

そう、計量経済学だけは、実は良(B)でも博士課程に進めます

しかし、そこは天下の東京大学なんと優上(A+)相当の成績をとった学生が2人も居たのでした。ちゃんちゃん。

 

とまぁ、発狂しそうな速度と濃度で進む計量経済学ですが、指定教科書はGreenとHansenです。

 

このうち、Greenはいわゆる第7版が1200ページ*82にも及ぶ、いわば「鈍器」でございまして、発狂した経研生による殺人事件の凶器の1つとしても有名(大嘘)です。

 

ただ、分からなくなったときとかコースワークが解けなくて真夜中に気が狂いそうなとき、詳細で分かりやすい本書は、孤独な経研生の友人兼枕として大変重宝されます。

 

ちなみに、僕はこの鈍器をGUT内の気の置けない友人であるKt君に安価で譲ってもらった*83御陰で、何とかコースワークを生き延びました。

改めてここに感謝を述べておきます。

 

他にもHayashi*84とかが計量経済の教科書としては有名で、日本人が書いているので非常に読みやすいのと、コースワークと章末問題が被ってたりして困ったときに読むと重宝しますが、古いので最新の分野には対応しておらず、あくまで副読本感があります。

 

しかし、ここで耳寄りな情報なのですが、なんとGreenの巻末付録の数学の章とHansenは、ググれば分かる通り、著者によってタダでPDFが公開されています

 

そう思うと、確かに150ページほどあるものの、Greenの数学付録は春休みの予習用に最適です。

計量経済学1を生き延びるために必要な基礎部分のエッセンスが詰まっていて、皆タダで使えて友人*85との輪読もしやすく、そして、慣れない英語表現に慣れることが出来るので。

 

また、気になるなら、同じHansenでも"Econometrics"ではなく"Introduction to Econometrics"を読んでみるのも手です。

やっぱりタダなので。

 

ただ、最初は慣れない英語を読むのも多くの人にとって大苦労だし、特に数学の極値みたいな計量経済学を英語で学ぶのは英強以外には非常な苦痛であり、コアコースが始まった春以降の余裕の無さでは、体力をこの上なく吸われることもあります。

 

とはいえ、日本語による計量経済学の教科書は長年良著が存在せず、翻訳もまた、古くなってしまっているものが多かったのが近年までの実情であり、先輩方のブログなどにも何も登場しないことが多いです。

 

しかし2015年以来、最近ようやく日本語による書籍が少しずつ充実してきているらしく、幾つか参考になる教科書が充実してきました。

 

例えば、最初のうちは難波「計量経済学講義」が救いとなると思います。

主に計量経済学1の範囲をカバーするこの教科書は、日本語で、薄く、そして数学の付録が充実したうえでエッセンスの詰まった良著であり、時々参照していました。

 

また、計量経済学2で困ったときは、末石「計量経済学 ミクロデータ分析へのいざない」が役に立つはずです。

 

こちらはより発展的*86な内容となっており、日本語で、薄く、やっぱり重要なトピックをカバーしています。

こちらは週数回は読んでました。

 

何より、両者ともに嬉しいのは2000円前後だということです。

たったバイト2時間分のお金で、何時間も理解を早めることが出来ます。

 

ちなみに、難波明夫先生と末石直也先生は、不思議なことに御二人とも神戸大学大学院の教授です。

東京大学大学院経済学研究科は正直、経済学の国際共通語たる英語に適合できない人はドロップアウトするしかないのが暗黙の前提になっている世界観*87なので、まさしく神戸大学大学院の教育の手厚さを感じる瞬間です。*88

 

ただ、やっぱり詳細な数式とかは洋書かスライドにしか無くて、結局は理解の助けにはしつつ、最後はスライドを理解できなければ死ぬしかないんですけどね。

 

 

終わりに

以上が文系大学院生の、世間で言われる「猫のように暇で」「ニートのような」「趣味に耽溺している」生活です。

 

まぁ、実際多少は日常に応用してみたりもするのは事実ですし、欠片すら面白いと思えないならそもそも来ないのは間違いない*89のですが、そんなに楽で良いものではありません

 

モラトリアムの延長気分で来ると地獄を見るのではないでしょうか。

よく研究室に泊まってる理系の院生を見ても、ゆるふわモラトリアムだと思えるくらい社会に染まってしまった後なら兎に角。

 

それに、経済という分野は、結局は政治制度とか金銭による判断から逃れられない分野なだけに、聞いてて滅入る部分も結構あります。

夢の新技術や、好きな歴史や文学を追うこととの違いがあります。*90

 

ただ、来るだけの価値がある場所だとも思います。

 

何故なら、例えば世間的には非常に高度な統計学を扱えるようになるからです。

何を隠そう、私が大学院にきた理由も、この辺が一番大きいです。

 

時代の流れ的に最新のデータサイエンスは今後ますます拡大を見せ、恐らく義務教育プログラミング必修化とかもあって、データに基づく判断と言うのはメジャーなものになっていくと思われますが、下手な理系の何十倍も*91、その技術を高度に身に着けられます。

 

また、理系では統計学機械学習の授業として行われることも多いらしいですが、機械学習が予測メインなのに対して、より供給の少ない因果推論の分野で、社会科学という実験室の環境よりはるかにデータが劣悪であることが前提のデータの扱いを学べます*92

 

それに、最近はよく個人的に電気工学科の人と話したりするのですが、この辺の行列とか解析学とか統計とかは共通言語たり得るので、割と話も弾みます。*93

学部生のころなら、チンプンカンプンで裸足で逃げ出したことでしょう。*94

 

統計以外では、例えば日々英語でボコボコにされてるので、英語力は伸びます。

ただ、入国制限下の現在は授業に留学生が居ないので、期待していた留学生フレンドは全然居らず、今もどうしようか試行錯誤の中ですが。

 

あと、因果推論を続けるという意味で、永遠に「それは相関か、因果か」とかも日々考えてるので、論理的思考に強くなった気がします。

 

あと、単純に「無限にやることがあって圧殺されそうなとき、いかに正気を保ちながら短時間でリフレッシュして極限状態を乗り切るか」的な能力が身に付いた気もします

 

まあ、挙げればキリがないのでこの辺にしておこうと思います。

良いオチが思いつきませんでしたが、お読みいただきありがとうございました。

 

正直、20000字は書きすぎた感が否めない

 

犬上ちょこ

 

 

参考文献

昔日の先輩方のブログ

楽しみながらの経済学 東京大学大学院経済学研究科について

楽しみながらの経済学 東大院試の面接

いろいろ詳細が書いてあったり。

更新が途絶えてしまってるので、詳細は不明。

 

修士コア科目の予習に有用と思われる本 - Sitting in an Armchair

マクロ経済学の勉強に参照した本まとめ - Sitting in an Armchair

苦労してそうな先輩のブログ。Baglianoとか、上で挙げたほんの一部はココで知った。

思うことは皆同じらしく、今読み返しても同じ末石計量を発見してたり、GreenのAppendicesを勧めてたり、親近感が強い。

 

ある大学院生の日記

とても古いので何かの役には立たない。

でも、読んでると妙に親近感が湧く。

それにしても、この文章に癖がある感じはどこかで見たことある気がしてならないんだけど、どこで見たか思い出せない。うーん…?

 

経研院生のひとりごと 院試

制度面等で極めて正確な情報が載っている。

古いので少し違うものの、授業の詳細とかも書いてあるので便利。

当時の計量はWoodridgeを使ってたらしく、詳細を見てもGreenでボコボコにされた民としては今より楽そうに感じるが、博士課程に進みDC1をとれるような優秀な人でもコアを落とすことがあるというのが良く分かる

また、院試に関しても非常に丁寧に色々ぶっちゃけ話も含めて載っている。

Wikipediaは中身が古くなっているので読んではいけないことがよくわかる

 

大学院という場所に関して

大学院の歩き方

近畿大学の星河先生の丁寧なページ。

 

大学院での経済学の学び方

東大経研の岩本先生のページ。

就職事情などは20年経ってしまたので、今はこの記事とは比べ物にならないほど厳しいらしいが、カリキュラム設計などに関しては変わっていない。

 

大学院受験・院試に関して

東京大学大学院へ行こう!―提供:中央ゼミナール

さらっと受験例に、経済学研究科が実は難しいという内容が書いてある。

 

【2021年最新版】東大院試の倍率【研究科ごとの難易度】 | ほぐ&らむの研究所

意外な話だが、文系なので全然知られていないものの、実は東大経研は東大の数ある大学院の中でも一番倍率が高いらしい。

理系と違って楽だとか言ったやつ誰だ、出てこい◇大学院入試の研究科ごとの難易度について (異論は認める) - 学歴ロンダリングマンの悲しき末路)。

 

東大経済学研究科の院試に関する情報

筆記が中止になった僕らの話より参考になりそう。

実は経研を受けた内部生(東大経済学部生)も、当時で5人に1人は落ちる(筆者注:現在では1.3倍~1.5倍まで跳ね上がり、4人か3人に1人は落ちる。)という恐怖のデータが載っている*95

また、当時の全体の倍率は3.3倍程度だった(筆者注:現在は約4~5倍)らしい。

 

プロヴィデンス生存記録 : 大学院経済学研究科院試対策

少し古いけど、筆記対策の教科書とかも載せてくれてる。

 

東大経済学研究科受験ブログ

書いた人は横国出身らしい。外部生向け?

 

東京大学経済学研究科の2020年度院試に関する覚書 - 経済学修士残酷物語

残酷物語というタイトルが非常になじむ

結構シビアに内容が書いてある。おおむね正確。

 

研究計画書の参考資料

Daichi Shirai - ゼミ(演習)

経済学部生お役立ち情報がたっぷり。

 

高齢経済社会研究センター - 大学院進学ラジオ講座テキスト

Economics of Aging; 加齢経済 - 留学情報

東北大のページ。特に下は吉田先生の丁寧な例まで載っていたが、リンク切れの可能性あり。

 

http://user.keio.ac.jp/~kiyota/kozo/Courses/Proposal_j.html

 

*1:確かに、某芸術史系の先輩の話を聞いてると、そんな生活してる雰囲気もあるけど。

*2:実際は学部で就職する人も多いし進学率は分野次第だが、キャリア上でハンデになることは意外と少ない。就活してると結構感じる。

*3:首席論文。とった人が一流の経済学者になることも多い、経済学者の登竜門。

*4:3ヶ月は前が良いと思う

*5:課長・部長級クラス数名含む

*6:状況を解説したら、キャリアコンサルも「普通、本選考でもそんなのないよ」って唖然としてた。

*7:内部生は卒業単位より余分に選択科目から大学院との合併授業を履修すれば、既定の範囲内で単位を先取りできる。

なお、専門科目は持ち上げ出来ないという情報は詳しい人しか知らず、教務課も上がるまで教えてくれないので、毎年何人も必死にとった難しい大学院合併授業の専門科目単位を持ち上げられず泣く。

*8:Math Camp。学問版ビリーズブートキャンプ的な?

*9:TOEICと違ってメモを取ってもいいが、TOEICと違ってSpeakingとWritingのある4技能試験で大変なので、受験したい人は対策は早めに。

*10:経済学の試験で滅茶苦茶点がとれれば60点でも受かると噂されているが、足かせにしたくなければTOEIC730点級の80点が必要と噂される。少数意見に、実は経済学の成績しか見て無くてTOEFLはほとんど意味が無いという噂もあるが、真偽不明。

*11:関数の上位概念

*12:理系向けに例えてみるなら、苦手な国語や社会で延々と法律の解釈法や古典解釈に必要な事前知識を英語で詰め込まれてる感じかもしれない

*13:経済学の大学院では国際的に大体共通のカリキュラムとして、研究以前にまずは基礎を習得すべくコアコースをこなすことが求められる。

*14:例えばクロネッカー積やナブラ演算子

*15:例えばハミルトニアン

*16:RとPython

*17:実際Rは使えたので、その回のTAセッションには出ず資料だけ見て済ませた。

*18:今年はネイティブの准教授を含んでたが、真の敵はネイティブではなく、抑揚も無く小声で早口な英語で話す日本人の先生だったり。

*19:計量経済学とか

*20:マクロ経済学とか

*21:k先生のミクロ経済学2とか

*22:メディアン

*23:ミクロ経済学、経済学のための数学、計量経済学

*24:マクロ経済学

*25:ただし、コロナ禍で研究室の使用頻度が低く相談が円滑でなかったのも拍車をかけた可能性があります。

*26:被って2個も出ると、結局その週は死に物狂いになる

*27:マクロ経済学とか

*28:大学院生なので、足りないものは自分で学ぶのが当然といえば当然な気もします

*29:実を言うと、科目によっては修士で終えるつもりの人はWordでも良いと言われてたんだけど、大体チーム組んでる人に博士目指す人が居るのでそうなる。

普段その優秀さに助けてもらってるから仕方ないね。

*30:ただし、東京大学経済学部は教養学部と合計すると、何だかんだ法定卒業単位の124単位を超える136単位が卒業最低単位になるし、僕も150単位以上とって卒業してるので、世間一般の大学生よりは忙しい。

*31:経済学の本場はアメリカなので、優秀過ぎる人はアメリカに出ていく。

ちなみに、QSシモンズとかTHEの大学ランキングで東大の経済系分野は世界20位から30位くらいで、英米以外ではEU圏含め一応世界的にもトップクラスらしい。

ただ、そもそも大学ランキングに意味があるかは疑問だよね。自分の実力が大切。

*32:同期のA君とか。めっちゃ良いやつで大好きなんだけど、皆と土日も無かったよねって話して共有概念であると確信したうえで同じ話出したら、「僕は土日は休んでたけど…」って微笑んだ。バケモノか。

*33:失踪状態なので、ネッ友に心配されてた

*34:おかしいな、研究もしてないのに

*35:犬上調べ。サンプルが少ない

*36:研究用の修士号ではなく、専門職学位をえて業務等に活かすのが目的なので、ある意味当然。

*37:実は正式には大学院でなく大学院公共政策研究・教育部である

*38:激怒したかは噂だが、事実として外部からの履修人数制限自体はある

*39:博士課程行かないけど受けた。可は恥ずべきだし、計量経済学をやるために大学院に入ったので。

*40:Mathmatics for Economics

*41:和名不詳

*42:非常に重要

*43:上方セミ連続性ではない

*44:lattice。もしかしたら「束」の方が訳として正しいかも。

*45:約50年前の教科書で最新の定理とかは載ってないけど、分かりやすい洋書の名著。

*46:個人的には明治大学の「論理と集合」がオススメ

*47:早稲田大学のとか。

*48:経済学部生でこれを知らないやつはモグリ。

*49:洋書

*50:海外Ph.Dではよく無限に文献を読まされると言うが、数学を使う学問では無理な気がする。

実際、数理科学研究科みたいなところでは、そういうことはしないらしい。

数学の証明を1日に100ページも読んで完全に理解できるやつが居たら是非知りたい。世紀の天才か、モグリである。

*51:多分1/3くらい。

*52:ラグランジュ乗数法はt=0, 1, …, Nみたいな離散時間だが、ハミルトニアン積分形で連続時間について解ける

*53:超人宇沢弘文先生。

東京大学経済学部の偉大な2宇弘の1人。

なお、もう1人はイデオロギー色を排除したマルクス経済学である宇野学派を打ち立てたことで高名な宇野弘蔵

宇沢先生に関しては、詳しくは東大経友会報の追悼号を参照。

*54:林文夫先生。存命。

*55:Recursive Macroとか

*56:名著だが、マンキューレベルの教科書で基礎をしっかり固めて無いと取っつきづらい。

*57:ただし、数学的には学部生でも読めそうな甘い内容になってる

*58:和名:ホドリック・プレスコットフィルター

*59:和名:自己回帰モデル

*60:和名:修正ディッキー・フラー検定

*61:和名:ベクトル自己回帰モデル

*62:噂では、元々信号の複合とかに使われたりする関数らしい

*63:和名:ベバレッジ・ネルソンまたはビバリッジ・ネルソン分解

*64:つまり、これだけを読んでデータサイエンティストになれると思ったら大間違い

*65:後述

*66:通称、「沖本時系列」「緑本

*67:3年の時は重要だと気づいてなかったので、指定教科書が英語のWoodridgeなのと、黒板に英語で爆速で書かれる板書に怯んで撤退した。4年の時は他に最優先でとりたい単位と被ったのでとり損ねた。

なお、研究休暇とコロナ禍を経て担当の先生が日本語で資料を作るようになり、かつ指定教科書もNLSAに変わったので、現在なら前ほど困らないはず。

*68:薄い。数学的な重要部分を多く含みつつ、丁寧に解説し、Rのコードまで含んでいる神書。

*69:発展的な内容まで網羅しつつ、数学的な内容を極限まで抑え直感的理解をグラフ等で形成してくれる。ゼミとかで論文の輪読が始まる前に読んでおくと、実証研究の論文を理解できるようになる神書。

*70:最低限読んでおくと計量経済で足を掬われないかもしれない。

*71:Ordinary Least Square, OLS回帰

*72:Projection

*73:ワルドは、第二次世界大戦中のイギリス空軍機の撃墜データ分析で、「帰還した機体が撃たれてない場所をより厚い装甲に帰るべき。なぜなら、そこを撃たれた機体は帰って来なかったからだ」と、サンプルセレクションバイアスを指摘したエピソードが有名。

*74:Generalized Least Square, GLS回帰

*75:Instrumental Variable Method, IV

*76:2Stage Least Square, 2SLS

*77:Generalized Method of Moment, GMM

*78:Nonlinear GMM

*79:Maximum Likelihood Estimation, MLE

*80:機械学習で有名なノンパラメトリック検定ではない

*81:Local Linear Regression Model

*82:最新版は第8版。

*83:限りなく薄い今回のGUT要素

*84:トービンのqが実証研究に使えることを証明した、前述の林文夫先生。

*85:3月初頭の入学手続きに一番乗りして、来るやつに片っ端から声かければ数人は出来ると思う

*86:これでも自称、中級計量経済の教科書だというのが恐ろしい

*87:筆者の所感

*88:別に東大の先生方が教育熱心でないと言っているわけではないが、彼らは人格的には非常に温厚篤実でありつつ、学問にはゲロを吐くほど厳しいので、こういった手厚さではなく、古典的な例えで言う所の「獅子が我が子を谷に落とす」方針であり、僕のようなポンコツは這い上がれないだけである。

*89:OB訪問とかしてみたら、社会人の皆さんが仕事は嫌だ怠いと言いつつ意外とやりがいとかを感じてたりするのと、責任の重さの違いとかはあるものの、根本的には多分一緒

*90:もっとも、これらの研究にはこれらで別の独特の辛さが沢山あるし、楽だと言いたいわけではなく。ただ、経済が特に夢を抱きづらい分野だというだけです。

*91:物理系の人と分かってる前提で話してて「あ、その、統計は分野的にわからないので…」って言われたこともあるし、工学部の後輩の課題を助けたこともある。

*92:稀に勉強熱心な理系の人が計量経済の授業に出てきて「それってベイジアンじゃダメなんですか?」って聞いて、先生にボコボコにされてたりします。

ベイジアンや最尤法は、確かに分布が事前に理論や経験から推定出来たり判明してたり、あるいは事前分布の形に関わらず事後分布で正しいパラメータに更新できそうなくらい試行回数の多いデータなら非常に強力ですが、社会科学データや経済データには通用しないことも多いです。この辺で、情報系とよく喧嘩になる。

*93:運動方程式を解いてオイラー方程式が云々とか話してる。

*94:ただし、複素案数やフーリエ変換は対象外なので、よく話してて出てくるけど頭にハテナが一杯なのは従来通り。複素数が回転の計算に便利なのは理解したけど、Z変換って何?

*95:つまり、内部でも水準に達しない学生は容赦なく落とされる